2019 Summer UTMB

 8/30(Fri)-9/1(Sun) Chamonix (2)

【1、シャモニー〜8qフラット〜730m登り930m下り〜Saint Gervais(21.0q)】
 このUTMBの特徴の一つとして、夕方18時のスタートで、普通のランナーにとっては40時間近くを走り続けなければいけないことであろう。多くの耐久レースが早朝スタートであるのに対して、こういった夕方スタートの長時間レースの場合、レース前の睡眠が大切になるのは言うまでもない。
 荷物のデポは、ほぼ中間地点であるCourmayeurのみで認められており、荷物は金曜日の午後に、体育館で済ませることが出来る。私は15時頃に預けに行った。スタート地点には、多くの人が推奨するように1時間前に到着したが、あいにく雨が降り出したために、近くの教会などで雨を避けることとなった。雨で体を消耗することはなかったのであるが、後にこれがタイムとなって響いてくることとなる。


 そして雨も収まった18時にスタートだ。スタート地点を通過するのに5分経過してしまう。また、多くの他のマラソン大会などはスタート地点を通過してしまえばスムーズな流れとなるのだが、このUTMBは市街地をしばらく走るために、応援の両脇の観客が行く手を阻むために、スタートして10分程度はまともに走ることも出来ない。タイムを優先するならば、出来うる限り一歩でもスタート地点に近い方がいいだろう。
 スタートして2キロで、コースは右の林道(トレイル)に入っていく。入口のゲート状の石のために、短いが渋滞となっていた。コースはフラットと思いきや、所々にアップダウンがある。
 トレイルを抜けて舗装路を下り、左の橋を渡りHouchesの街の中に入っていく。
 ここで水分補給(U1)をすることが出来る。ここの通過は18:56(レース後、驚くことに2,078位だったが、本人にはその自覚は無かった)、そして左のスキー場内のトレイルに入っていく。
 ここの入り口にもゲートがあるために、少々渋滞がある。コースはしっかりとした林道の登りで、多くのランナーとペースを揃えて登っていく。

 左後方には、モンブランの氷河を抱えた山々が迫る。
約730mの登りで、下りに入っていく。
 傾斜はかなり急ではあるのだが、急な直前の雨にも関わらず下りにくいことは無かった。美しい夕焼けを眺めながら下っていく。この下りの途中では、ボランティアの私設エイドステーションも散見された。多くは広い林道コースなのであるが、時にはシングルトラックになる部分もあり、追い抜きなどの技術が必要とされるであろう。他のランナーのヘッドライトのお世話になれば、ライト無しでも下れるのだが、足元が不安定な部分もあり、早目に用意しておいた方がいいだろう。
 そしてSaint Gervaisの街に入り、舗装路に入ってっていく。ここにはフルエイドステーション(U2)がある。サラミ、チーズや甘いおやつ、バナナ、オレンジ、パスタなどが揃えられている。水分は、普通の水道およびペットボトルがあるのだが、ペットボトルを揃えたエイドは少なかった。コーラは各エイドにはあるのだが、その他の市販品は無かった。やや胃腸の状態が不調であったのだが、ここで下痢が始まってしまう。今朝食べてしまったエクレアに問題があったようだ。このUTMBではトイレは充実しておらず、既存のトイレを使用するASが大半だ。ASを過ぎた右側の教会でトイレを済ませる。関門時間は22:00であるが、 21:07(1,751位、-327)には通過することが出来た。以後、このマージンをいかにキープしていくかが、完走のポイントとなる。
【2、緩やかな登り360m〜Contamines(31.2km)】
 Saint Gervaisの町中を走ってすぐに、右のトレイルに入っていく。コースは牧場内のシングルトラックが多く、追い抜きのタイミングが難しいであろう。いらいらしたランナーは、左右から強引に追い抜きをかけてくるであろう。暗闇の樹林帯のコースであるが、おおむねランは可能な傾斜である。最後はやや傾斜が強くなって、Contaminesのエイド(U3)だ。相変わらずお腹の調子は悪く、数の少ないトイレで下痢の世話をする。体がイマイチなのと、渋滞もあるので、なかなかペースも上がらない。水分を余分に摂取しようとするのだが、胃の調子も悪そうだ。カルピスに似た飲み物があり、これを摂取するようにする。関門時間は0:00であるが、22:51(1,479位、-272)には通過することが出来た。余裕は60分以上になったので、やや安心して現在のペースを維持するようにする。

【3、おおむねフラットな川沿いのトレイル4q〜4.2qで490mの登り〜Balme(39.3km)】
 前半はおおむねフラットな、普通なら楽勝で走れる市街地〜トレイルであるが、体の調子が悪くてペースが上がらない。下痢がおさまるまでの辛抱だと思い、ペースを落として走っていく。途中の公園では、またしてもトイレの世話になる。そしてここから本格的な岩の登りが始まる。途中からは樹林帯を抜けて牧場地帯を登るために、前方には無数に連なるヘッドライトを見ることが出来る。ひときわ明るい場所が次のエイドステーションであるBalme(U4)だ。他人のペースに惑わされず、自分のペースを刻み続ける。

 エイドではペットボトルの水が配給されておらず、まずは炭酸水を試してみるのだが、10秒後にいきなり嘔吐してしまう。更にはまたまたトイレの世話になる。救護が集まってきて収容しようとするのだが、ここでの時間の浪費はリタイヤに直結する。平然といつもの事だと対応するのだが、消化管の上も下も駄目だということで、完走が厳しくなることを自覚する。標高も1,700mを超えて気温も下降、全身に震えが出てきたために、上にレイヤーと上下に雨具を装着する。このまま何も摂らなければリタイヤは間違いないので、何か口に入りそうなものを探す。私にとっては嘔吐への最適の処方箋であるジンジャーエールは、残念ながらここには無いようだ。あまり選択肢は多くはないのだが、紅茶&角砂糖、オレンジ、コンソメスープで僅かに胃を満たす。ここの関門時間は2:00であるが、00:59(1,676位、+197)には通過することが出来た。自分の力を信じて、登りながら体力を回復させることに努める。


【4、730mの登り〜880mの下り〜Chapieux(50.1km)】
 先程胃に入れたものを吐いてしまったらレースは終了してしまうので、胃が落ち着くまではペースを下げて登っていく。気温もどんどん下がってくるのだが、上下雨具を装着したために体温はうまくコントロールできているようだ。峠に近づいてくると風も強くなるのだが、これもコントロール可能なものであった。そして峠を通過、平坦にはなってくるのだが、まだ緩やかな登りが避難小屋までは続く。ここで下りに備えて水分を補給するのだが、標高も2,400mを超えて腸管虚血になっているのであろうか、またしても嘔吐に見舞われる。この標高での、この気温でのエンジンストップは、かなりやばい状況ではあり、今は標高を下げることが一番の治療法だ。ゆっくりとエンジンをスタートさせてチェックポイントを2:52(1,735位、+59)通過、走りやすい下りに入っていく。真っ暗闇の下りで、ライトを消せば満点の星空だ。前方を走るランナーのヘッドライトを辿れば、だいたいどこにエイドステーションがあるのかわかるであろう。Chapieuxエイド(U5)に入る手前で、まずは携帯電話と雨具のチェックがあった。このエイドでは、サポートが入ることが出来るため、日本人チームはヌードルをみんなですすっていた。『それちょうだい!』とはとても言えずに、定番となったコンソメスープと紅茶を補給する。ここの関門時間は5:15であるが、3:41(1,712位,-23)には通過することが出来た。エイドでの滞在時間は14分であった。
【5、960mの登り〜200mの下り〜250mの登り〜600mの下り〜Combal(67.3km)】
 エイドステーション内は熱気で包まれているが、歩き出しの最初は寒気を感じる。うまく雨具を脱着しながら、体温をコントロールする。しばらくは緩やかな舗装路の登り、そして平坦な牧場内のトレイルとなるが、強烈な登りが始まる。上方には、絶望的とも思えるヘッドライトの列が連なる。Chapieuxまでは厳しめの関門時間設定ではあるのだが、関門時間を過ぎても延々と下方にもヘッドライトの列が連なる。体調は相変わらずで、自分の体の調子を聞きながらペースを設定していく。標高も2,500mまで登らなければならず、明け方の寒風が体を痛めつける。そしてSaigne峠(2,516m)を超えればイタリアだ。
 時刻は6:15(1,509位、-203)、前方には幻想的な朝焼けが待っていた。走りやすいトレイルを駆け下って避難小屋へ、そこから最悪の評価を得ているおまけのルートの登り下りだ。
 ここはシングルトラックであるとともに、浮石だらけのコースで、足にはきついトレイルだ。遅いランナーについてしまうと簡単に分単位の遅れになってしまうので、一人でもいいからかわしていくといいだろう。
 後半の下りは、非常に走りやすいトレイルだ。そしてCombal湿原のエイドステーション(U6)に到達する。ここの関門時間は10:00であるが、8:06(1,515位、+6)には通過することが出来た。ここでもトイレの世話になるが、下痢の方は随分落ち着いてきたようだ。尿もそれほど濃縮しておらず、体はやや回復傾向か。食欲は全くないのであるが、定番となった紅茶&角砂糖で栄養を摂るのだが、何を思ったかミルクを入れてしまったのが失敗であった。エイドを出て5分後には全て吐き出してしまった。スタートからここまでまともな食事は摂っておらず、ここにきての再嘔吐はまたしても危険信号なのだが、とにかく標高の低いCoulmayeurを目指すことにする。

【6、450mの登り〜460mの下り〜750mの下り〜Coulmayeur(80.0km)】
 明らかにペースが落ちる中、マイペースで強烈な登りをこなしていく。背後には圧倒的なモンブランの絶景が広がる。

 真正面の岩山に登っていくのではなくて、カールの淵を辿って左の小山に9:32(1,537位、+22)に辿り着く。

 ここからは、快適なダウンヒルセクションだ。体は弱っているのだが、そこそこのスピードで下っていく。逆にここを走れないようであれば、完走もままならないであろう。そしてスキー場のエイドステーション(U7)に10:14(1,514位、-23)に到達する。

 多くのランナーが腰を据えて休息していたが、いいリズムで下れてきているので、短時間でエイドを出発して更に標高を下げていく。


 かなり下りの遅いランナーもいるので、遠慮無しに抜いていき、数え切れないくらいの九十九折りをこなせばCoulmayeur市内だ。

 平坦になり感じのいい石畳の街中を抜けていくのだが、気を抜かずに走りを継続して、ドロップバッグのある最大のエイドステーション(U8)に到達する。靴は調子良さそうなので、そのままとする。靴下と汗で濡れたシャツを交換する。下痢の方はかなり落ち着いてきたようだが、食欲は相変わらず悪いままだ。何とか口に入りそうなものを選び、口に入れる。もうタイムは関係無く、完走できるかどうかが一番のポイントとなってきたので、アラームを設定して体育館の隅で20分程度の仮眠をとる。ここの関門時間は13:15であるが、10:59(1,439位,-75)には通過することが出来た。エイドでの滞在時間は45分(11:44、1,386位、-53)であった。1時間30分程度の貯金だが、大きなトラブルさえ無ければ、完走は近づいてくる。ここからフィレ峠までが、後半の核心だ。



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