Running (2007.9)


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9/1
     

心の芯を折る一言 医療のネット界では大きな話題になっているニュースであるが、この日記にも取り上げておきたい。また奈良で起こった流産の方の搬送先が見つからなかったという事例だが、日本社会の持つ村八分精神、本質をとらえない魔女狩り報道には、心底嫌気がする。未熟そして幼稚なマスゴミ、日本政府、そして日本国民、いつになったら本質を追求する論議が始まるのであろうか。


http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/shucho/070831/shc070831001.htm

【主張】妊婦たらい回し また義務忘れた医師たち

 次々と病院から受け入れを断られ、たらい回しにされた奈良県の妊娠中の女性が、救急車の中で死産した。奈良県では昨年8月にも、分娩(ぶんべん)中に意識不明となった妊婦が、19カ所の病院に転院を断られ、死亡している。悲劇が再び起きたことに死亡した妊婦の夫は「この1年間、何も改善されていない。妻の死は何だったのか」と怒りをあらわにする。その通りである。「教訓が生かされてない」と批判されても仕方がない。


 女性はようやく見つかった10カ所目の大阪府高槻市の病院に向かう途中、救急車内で破水し、その直後に救急車が軽ワゴン車と衝突した。

 事故後、消防隊員が連絡すると、病院側は「処置は難しい。緊急手術も入っている」と断った。その後、大阪府内の2病院にも断られ、困った消防隊員が再び要請すると、高槻市内の病院は受け入れをOKした。結局、病院にたどり着いたのは、119番から3時間もたっていた。

 奈良県では危険な状態にあるお産の周産期医療の搬送は、健康状態を把握しているその妊婦のかかりつけ病院が県内の2病院に連絡し、それぞれが受け入れ先を探す。この仕組みだと、比較的受け入れ先が見つかりやすい。

 しかし、死産した女性はかかりつけの医者がいなかった。このため、一般の搬送の手順で消防隊が受け入れ先を探した。これが時間のかかった理由のひとつだという。

 奈良県の幹部は「かかりつけ医のいない妊婦の搬送は想定外だった。すぐに対策をとりたい」と話すが、トラブルや事故は予期せぬ中で発生するのが常である。早急に抜本的対策をとる必要があろう。

 周産期医療を扱う病院は、全国的に減少している。産婦人科医は内科医などに比べ拘束時間が長く、訴訟も多いからだ。

 妊婦のたらい回しは、奈良県だけに限った問題ではない。厚労省は産科医などの医師不足対策に本腰を入れて取り組むべきである。

 それにしても、痛みをこらえる患者をたらい回しにする行為は許されない。理由は「手術中」「ベッドがない」といろいろあるだろうが、患者を救うのが医師や病院の義務である。それを忘れてはならない。

 当日の奈良県立医大に批判が起こっているようだが、当日の勤務体制について経過が発表されている。朝の7時前後から通常業務に入り、そのまま当直、そして翌日も通常業務をこなさなければいけないこの体制に対して、『義務』という言葉に結論を持っていくのは、はなはだ場違いであるように思う。
http://www.naramed-u.ac.jp/~gyne/2007.08.28.html

今般の妊婦救急搬送事案について

 去る8月29日、救急搬送中の妊婦さんが不幸にも死産にいたりましたことについて、誠に遺憾に感じております。
 今回の事案につきましては、マスコミを通じて、さまざまな報道がなされておりますが、当病院の産婦人科における8月28日から29日にかけての当直医師の勤務状況や当病院と救急隊とのやり取りについて調査しましたので、その結果を公表いたします。


平成19年8月28日の当直日誌記録より


(産婦人科当直者 2名)

時間 対応内容

8月28日(火)     夕方から抜粋

19:06         妊娠36週 前回帝王切開の患者が出血のため来院、診察後に帰宅
19:45         妊娠32週 妊娠高血圧のため救急患者が搬送され入院、重症管理中
09:00~23:00     婦人科の癌の手術が終了したのが23:00、医師一人が術後の経過観察
23:30         妊娠高血圧患者が胎盤早期剥離となり緊急帝王切開にて手術室に入室
23:36~00:08     緊急帝王切開手術
00:32          手術から帰室、医師一人が術後の処置・経過観察をする。重症のためその対応に朝まで追われる。妊婦の対応にもその都度応援する。当直外の1名の医師も重症患者の処置にあたり2:30ごろ帰宅


8月29日(水)

02:54         妊娠39週 陣痛のため妊婦A入院、処置
02:55         救急隊から1回目の電話が入る(医大事務当直より連絡があり当直医一人が事務に返事) 「お産の診察中で後にしてほしい」、そのあと4時頃まで連絡なし
03:32         妊娠40週 破水のため妊婦B入院、処置 (これで産科病棟満床となる)
04:00         開業医から分娩後の大量出血の連絡があり、搬送依頼あるが部屋がないため他の病棟に交渉
04:00頃        この直後に救急隊から2回目の電話が入る 「今、当直医が急患を送る先生と話しをしているので後で電話してほしい」旨、医大事務が説明したところ電話が切れた
05:30(病棟へ)    分娩後の大量出血患者を病棟に収容 (産科満床のため他の病棟で入院・処置)
05:55         妊婦Aの出産に立ち会う。その後も分娩後出血した患者の対応に追われる
08:30         当直者1名は外来など通常業務につく、もう1名は代務先の病院で24時間勤務につく

 ちなみに当直は、スタッフレベルが一人と後期研修医レベルが一人の2人でするのが一般的。2人だけでこれだけの症例をこなすのは、日本の体制ならばかなり難しいことであろう。ちなみに給料は2万円前後。
 そしてもう一つ強調したいのは、この勤務は実質『夜勤』 であり、決して『当直=ほとんど労働する必要の無い状態』では無いということ。この勤務体制は、明らかに労働基準法違反です。給料もしっかりと夜勤手当てが支払われるべきであります。

 昼からYをピックした後、キャンプに出撃する。天の川が綺麗だった。
9/2
       のんびりポンツンボートでくつろぐ。
9/3
       5時起床で、キャンプ場から病院へ向かう。回診の後、12時前に再びキャンプ場へ。1時間半かかるのだが(往復3時間)、近場のキャンプ場ならば、十分可能である。ArmishでLunchをとった後、買い物をして帰宅する。
9/4
       #44 AS,CAD,s/p CABG twice(LITA,SVG=patent), AVR(CE21),Cabrol technique、ACPによるものか、LCA右側にtear、re-ACCでrepairを試みるも止血は困難で、Cabrolで逃げ切る。resternotomyの止血を十分に行うこと、ACPをしっかりと決めること、やみくもに針を重ねていってもいけない、逆針を活かすこと、すぐにどこかでre-ACCを考慮すること。これらの教訓を、しっかりと経験値として自分の中にInputしていかなければいけない。

9/5

       #45 Marfan,CAD,ASr,descending aneurysm,(s/pDA-I,CABG twice(LITA,SVG=patent)), Elephant trunk,Arch,Ascending replacement,AVR SJ25,LCA-Cabrol,RCA button,CABGx1(PD)、昨日と同様の3回目のOp.、循環停止は40分、11箇所の吻合。出血は大したことは無し。
9/6
       #46 Dis An,CAD,(s/p DA-I,Ross,Ascending,aAo-R iliac,RRA bypass),Descending replacement、これまた凄いAnatomyとなっているが、すんなり終了する。
 連日、凄い症例が続いている。日本ならば、月に一回の症例であろうか。アメリカの中でも、こんな症例が多く集まってくるのは、ここの特徴であるようだ。そんな手術にチームの一員として参加できることは、非常に光栄である。
9/7
       今日は、ボスが学会出張で手術は無し。たまっていた仕事をこなしたり、BMEに遊びにいったりする。夜は当直。
9/8
       当直明けで回診した後、帰宅する。就寝。
9/9
       病院に出撃した後、Yと恐竜を見に動物園へ。
9/10
       #47 ASr,Asc Ao An,AVR(25CE),Ascending(26)、前立ち。
9/11
       #48 AR3,AAA,CAD,David(H26),CABGx1(LITA-LAD)、#49 CAD(LMT),CABGx3(LITA-LAD,SVG-D1,Cx)、そのまま当直に突入。
9/12
      安部政権の幕引き 何でも壊しちゃった小泉さんからバトンを引き継いだ現政権だったが、引き際もあっさりせずに、臨時国会代表質問の翌日に辞任を発表するというどたばたぶりであった。さて、今後どういう方向に向かっていくかであるが、現衆議院圧倒的優性の体制を維持する限り、あまり多くの変化は起こらないのではないかと思う。恐らく誰が後継者になるにしろ、現在の路線を引き継ぐものであり、2009年9月の総選挙に向けて大敗しない状況を見据えて総選挙にもっていくことであろう。
 一方、かなり焼け野原現象が散見されるようになった日本の医療であるが、あと2年もつかというと、いささか疑問である。2005年の日記を見直してみても、あの時点での報道される医療関係のホットなニュースは、1週間で一つくらいであった。しかし現在では、毎日ネタに尽きない状況である。
 医師も人間である。年をとる。2年間に何も改善されなければ、体力は自然衰えていく。産科が危機的状況である現在、さらに救急・小児科・脳外科など外科系にもフラッグが立てられている。しかし、このダウンヒルを一気に改善できる決断力(政治家)は、現在の日本には見当たらないように思う。
9/13
       #50 AR2,AAA,David、これで4例目。自分でするとなるとかなり手ごわいであろうが、かなり自分でもイメージが出来てきた。
9/14
       今日もボスが出張で不在。ペーパーワーク。
9/15
       来月のローテーションが発表され、Metro(外勤)になることが決定した。いつかは行かねばならないし、結構自分で執刀する機会が増えるというし、ここで何もさせてくれない最初の6ヶ月の間にいくのがいいとも言えるし、ちょっと複雑な気持ちだ。まあ、とりあえずこの3ヶ月を大きな問題も無く乗り切っている(と思うので)、また気持ちを切り替えて新たな環境でがんばろうと思う。夜は愚痴宴会。
9/16
       今日はごろごろレスト。
9/17
       今日もボスが不在。ペーパーワークを進める。
9/18
     

 #51 BAV,AAA, AVR(CE25)+Asc(VT26)、やはりBAVのaortaは印象が悪い。こんなんPaperになるの、っていう実験だったが、ATSに無事にAcceptされる。Cleveland Clinicの名前は偉大だ。

9/19
       #52 BAV,AR4+,MiniAVP、そしてPercutaneous AVRの見学。BAVだったので、expansionは悪い印象。
9/20
       #53 Marfan,AAE,AR2+,modified David、止血に時間がかかる。
9/21
       #54 BAV,AR4+,AVP、金曜日の午前中に軽症があたると、必ずB roundが回ってくる。#55 AMI,CAD,pneumonia,IABP, OPCABGx3(LITA-LAD,SVG-RCA,OM)、(こんな症例は当然Dr.SではなくてDr.Nでした。)アメリカで初めてのOPCABを見たが、丁寧に縫っていた。
9/22
       いろいろ
9/23
       いろいろ
9/24
       #56 BAV,AAA,AVP,Aortoplasty、BAVのAVPだが、見た目AIは無くなるのだが、その代わりにASになるので、これが本当に長期予後的にいいのかは、少し疑問である。#57 AS,CAD, AVR(CE23),CABGx2(SVG,PD,OM sequential)、これはCABGx4であるべき手術であったと個人的には思うが、今は多くの症例を見ること。当直。
9/25
     

 明けでMetroへ挨拶へ。毎日手術予定が組まれていた。CCFと同数程度(月20)の手術症例が経験できるような感じだ。

9/26
       PARTNER Study x 2、本来なら各科2人もいれば十分なのだが、みんなわっしょいわっしょいでここCCFのピラミッド社会を見ているようであった。
9/27
       2例あると思いきや、正規レジデントに症例をとられてしまっていた。残念、しかしこれが我々FMGの現状だ。
9/28
       #58 BAV,AAA, AVP,Ascending(H-26)、#59 AS,CAD, AVR(M21),CABGx3(LITA-LAD,SVG-D1,RCA)、思っていたより血管の質は良かった。
9/29
       最後の当直。主治医性の弊害として、手術が終わればほったらかしで帰宅することが多いこと。何の連絡も無く(見てないお前が悪いと言われそう)知らない間に患者がICUにいて、帰室前からずっとPSVTでほったらかし(sinusと思っていた)。
 良好なMortality,Morbidityのからくりも多く、学ぶべきはシステムと症例数のみであるように思う。
9/30
6.0
     当直明けで新しいローテーションの勤務先へ。
 
 
6.0
     何とか3ヶ月生き残ったという感じ。長年臨床を離れていた上に、言葉が英語、薬の商品名名もさっぱりの上、対象が成人疾患に変わったこともあり、苦労させられた3ヶ月でした。大きなミスをしないようにと、守りに入ることが多かったと思うが、今後も決して『学ぶ』という気持ちを忘れずにいきたいと思う。


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