Running (2007.4)


月日
曜日
距離
内容
タイム
コメント

4/1

       Cottageでゆっくり。
4/2
     

医療のための財源
1、税金の投入 法人税の大幅な減税、銀行への多大な公的資金の導入、、、、考えさせられる部分は多いであろう。しかし大幅な税金の投入は、国力を考えた場合には、少し非現実的であるように思う。

2、個人出費の増加 実は日本での個人負担率は大きくなっている。ある程度ここまで先進化している日本の医療レベルならば、『命も金次第』、どこかで経済的リミットを作らなければならないように思う。

3、医療費削減 これが厚生労働省の進めている政策である。開業医レベルを含めての『ネットワーク化』によって、医療費を削減したいようである。しかしあちこちで勤務医レベルでの崩壊が進んでいるのを無視して政策を進めていっている節がある。新規開業医も火の車である。そして何より教育に力を注がなくなった日本の医療は、近い将来取り返しの付かないまでに地にレベルは落ちることであろう。

三重県医師会 http://www.mie.med.or.jp/hp/iryou/flash.html
兵庫県保険医協会
http://hodanren.doc-net.or.jp/kenkou/iryougahorobu/pamphlet/index.html

http://hodanren.doc-net.or.jp/kenkou/isi-fusoku.pdf

 三重県のものは、最後に国民の議論を提起するあたり、非常によく出来ていると思われる。一方、兵庫県の場合は、勤務医・開業医の区別をうまくごまかしながら、法人税の増税をせよ、という論調である。他方、紹介はしていないが、日本医師会のHPには全く危機感さえ見られない。
 本来は勤務医・開業医がもっと手を取り合っていい方向に向かわなければいけないのだが、お互いの利害関係の上でまだ議論をしているように感じる。三重県の結論ではないが、国民に選択の権利があるのである。現実を知ろうともしない国民であり、それをだまし続ける政府、情報操作の片棒をかつぐマスコミという図式である。


 GC2通。どうやら水曜日に試験結果の発送、土曜日に受領というパターンになりそうだ。木金とPhillyにも行かねばならず、あわただしい1週間になりそうだ。
4/3
      第二次世界大戦遺書一覧 以下のサイトを拝見する機会があった。思いは人それぞれであろうが、こういった事実は後世に伝えていかなければいけないと思う。『平時に処し、なおよく特攻精神を堅持し、日本民族の福祉と世界人類の和平のため、最善を尽くせよ』、現在にも当てはまる言葉であるように思う。
http://www.ne.jp/asahi/masa/private/history/ww2/

 戦局最後の関頭に直面せり。敵来攻以来麾下将兵の敢闘は真に鬼神を哭かしむるものあり。特に想像を越えたる物量的優勢をもってする陸海空よりの攻撃に対し、苑然徒手空拳を以って克く健闘を続けたるは小職自ら聊か悦びとする所なり。然れども飽くなき敵の猛攻に相次で斃れ為に御期待に反し此の要地を敵手に委ぬる外なきに至りしは小職の誠に恐懼に堪えざる所にして、幾重にもお詫び申し上ぐ。今や弾丸尽き水涸れ全員反撃し最後の敢闘を行はんとするに方(あた)り、熟々(つらつら)皇恩を思ひ、粉骨砕身も亦悔いず。特に本島を奪還せざる限り皇土永遠に安からざるに思ひ至り、縦ひ魂魄となるも誓って皇軍の捲土重来の魁たらんことを期す。茲(ここ)に最後の関頭に立ち、重ねて衷情を披瀝すると共に、只管(ひたすら)皇国の必勝と安泰とを祈念しつつ永へ(とこしえ)に御別れ申し上ぐ。尚、父島、母島に就ては同地麾下将兵如何なる敵の攻撃をも断固破摧し得るを確信するも何卒宜しく御願い申し上ぐ。

終わりに左記(原文は縦書きのため)駄作御笑覧に供す。何卒玉斧を乞ふ。

左記

国の為重きつとめを果し得で 矢弾尽き果て散るぞ悲しき
仇討たで野辺には朽ちじ吾は又 七度生まれて矛を執らむぞ
醜草(しこくさ)の島に蔓る(はびこる)その時の 皇国(みくに)の行手一途に思ふ
  特攻隊の英霊に申す。善く戦いたり、感謝す。最後の勝利を信じつつ肉弾として散華せり。然れどもその信念は遂に達成し得ざるに至れり。吾死を以て旧部下の英霊とその遣族に謝せんとす。次に一般青壮年に告ぐ。我が死にして、軽挙は利敵行為となるを思い、聖旨にそい奉り、自重忍苦するの戒めともならぱ幸いなり。隠忍するとも日本人たるの衿持を失うなかれ。諸子は国の宝なり。平時に処し、なおよく特攻精神を堅持し、日本民族の福祉と世界人類の和平のため、最善を尽くせよ。
4/4
     

なせば成る ダブル・ダブルライセンス 

4/5
       Meetingの後、Akronから飛行機でPhiladelphiaへ。ここに住むことになる場合の居住区域になるかもしれないBryn Mawer周辺を散策、Town Houseを見学する。一軒家に慣れてしまっているので、日本よりもサイズ的には大きな2BRでも、やはり狭く感じるのだが、静かな環境でもあり、ここなら住めそうな気がした。
 その後Central Cityに戻って、歴史地区を散策、Y先生と中華を食べた後、Y先生のお宅へお邪魔する。
4/6
       朝からCHOPの見学、忙しい先生なのでなかなか時間がなかったのだが、ようやく3時にお話することが出来た。Fellowの方ともお話することが出来、非常に有意義な訪問であった。
4/7
      USMLEs are over!! この1年間で受けた4つ目の試験だが、無事に合格することが出来た(涙)。私の外科系の頭では、お尻から血が出るくらいしんどかったのだが、もうこれを受けなくていいと思うと、自然に涙があふれてきた。これまでお世話になった先生、励まして頂いた先生、本当にありがとうございました。

USMLE Step 3: 84/204
Q book = 61%
UW = 52% (* 1.46 = 76)
Q bank = 64% (* 1.292 = 83)
USMLE 123 = 64%
USMLE CD = 75%
NBME = 250 (6W前)、350 (2W前)
(内はUSMLE Forumでの予想点数掛け算係数)

 NBMEは380で合格と言われているが、私の場合かなりNBMEが悪かった。Ethics関係の問題も多く、FMGには難しい問題設定なのかもしれない。USMLE Worldも最初の頃にやったので、かなり点数が悪かったのだが、 Score + 30という公式もあり、これをすること自体が有用であったように思われる。
 私の場合、短期間で突っ走ってきたわけだが、もう少し時間があれば、まだ得点を上げることは出来たかもしれない。特にMatchに臨む場合などは、そういったことも含めて勉強する必要があるであろう。
4/8
     

Yamato 留学すると右に傾く人が多いと聞くが、ご多分に漏れず私もかなり右よりである。今日は本当に久しぶりに一人で徳利を片手に晩酌しながら、『男たちの大和』を見る機会があった(M先生、ありがとうございます)。時は1945年4月7日、あれから62年である。戦死2,740人、生存269名。

 誰もが海上特攻であることを認識している絶望的な戦いの中で、多くの命を落としていった若者の気持ちを、日本人は決して忘れてはいけない。この攻撃を受けている大和の乗組員の魂を忘れてはいけない。我々もどんなに辛い事があろうとも、心の奥でもえたぎる熱い情熱を、大切にしていきたいと思う。

 アメリカ軍は大和南下の発見に際し、暗号文ではなくて平文を用いたそうだ。なめられたものだ。戦艦武蔵撃沈の際には、数十本の魚雷を必要とした教訓から、まずはレーダー・左側の対空砲への攻撃を集中させてから、艦が横転するように左側のみへの攻撃を行ったという。アメリカ南北戦争で見られたような、ずる賢い・戦争慣れした攻撃をしたことで知られている。Total warの概念、それがアメリカである。第一次湾岸戦争での驚異的な被害の少なさを見ても、本当にこの国は、、、と思ってしまう。


 いろいろな要素を加味して、最終的に就職先を一本化していくことにする。Cleveland Clinic, Mayo, Pittsburg、これら有名どころや、身近な所ではUniversity Hospital (Cleveland)なんかもFellowを募集していようだ。(http://www.ctsnet.org/jobs/listjobs.cfm)しかし逆にいうと、これだけ人が足りないという心臓外科の今後の展望・状況を一番憂慮しなければいけないのであろう。
4/9
       Paper work。やはり、JからHに変えておいてよかった。どうやらややこしい手続きは、education serviceが全部やってくれるそうだ。
4/10
     

 歯医者、Paper。CのStep 3の勉強を見ていると、よくあの点数で私が通ったなと、感じてしまう。勝因はCCSだったのか。隣で試験問題をやっているのを見ると、あれから短時間のいちに読むスピードが落ちてしまっていることに気が付かされた。速読、これもポイントとなるテストである。あれをもう読まなくていいと思うと、本当にほっとする。

4/11
       いろいろ。
4/12
     

 RVAD sacrifice、Paper。かなり進んだ。Cの願書を代わりに提出、慣れたものだ。Yのピアノのレッスンへ。

4/13
       Paper work。『Paper幾つ書いてもな〜』、『たくさん書いているやつは、逆に腕はな〜』、『これ本当に、全部自分で書いたの(誰かに書かせてFirstとったんちゃうん)?』、『Researchは時間があるからな〜』、今回のMatch interview含め帰国される日本人医師らからも、こんなきつい言葉を頂いてきた。半分趣味みたいな側面もあるのだが、与えられた土俵で自分の能力を出し切ることは、個人個人の持つポテンシャルに寄るものが多いと個人的には思っている。これらの言葉が本当なのか、臨床に移っても日本にいた頃を思い出して、ただの歯車の一枚になりきるだけではなく、+αを出していきたいと思う。

 最近の私の家事、朝食・ランチ・夕食・洗いもの・学校の送り迎え・掃除・洗濯・Yの勉強・Yの遊び・食料買い物、なかなか大変だ。就職の方だが、Official appointmentはまだもらっていないのだが、書類ワークは進んでいる模様。FMGは給料が正規の半分になるという噂もあるので、給料がいくらになるのかが心配だ。
4/14
(12.8km)
Bike
 

 今日も朝からCはクリニックで勉強。一方こちらは、朝食・Yの勉強・ビデオ・昼食・出撃・買い物・夕食・片付け・一緒にお風呂・洗濯のフルコース。現在冷蔵庫の中を完全に把握しているのは、私だ。
 自転車32km。

4/15
10.0
Jog
  この国は法治国家か? 最近の、内診問題に対する厚生労働省の通達や、僻地医療義務化に関しての動き、『待機時間は労働時間に含まれない』とする柳沢大臣の発言など、今までの日本には考えられなかった末期的症状が連日報道されている。現在、奈良県立病院産婦人科の先生による『時間外労働』に関する裁判が行われているが、現在の日本には、医療における明るい展望は皆無であるように思える。

 現実問題、このようなことを強制できるのでしょうか?

開業医は日曜や夜も診療を 携帯で連絡取れるように 今後の医療政策で厚労省

記事:共同通信社 提供:共同通信社
 【2007年4月16日】

 厚生労働省は13日、開業医に対し地域で果たすべき役割として、日曜日や祝日、夜間も診療することなどを求めた今後の医療政策に関する報告書案をまとめた。


 2030年には75歳以上の後期高齢者が、現在の2倍近い2260万人に増えるとみられており、現在は時間外や日曜・夜間の診療を行っている診療所が減少するなど身近な地域での医療に不安があると問題提起。

 このため、開業医について(1)地域で在宅当番医制のネットワークを構築、日曜日など救急センターに交代勤務(2)いつでも携帯電話で連絡が取れる(3)午前中は外来、午後は往診、訪問診療(4)みとりまで行う在宅療養支援診療所を含めグループによる対応で24時間体制の確保?といった取り組みが期待されるべきだと提言している。

 病院と診療所の役割分担については、診療所は1次的な地域医療の窓口として患者の生活を支えながら、急な発症への対応を診療所同士や病院との連携で実現。急性期の病院は、質の高い入院医療が24時間提供されるよう原則、入院治療と専門的な外来診療のみとする。

 報告書案は、都道府県が08年度までに定める医療計画づくりに役立てるようまとめた。

▽在宅療養支援診療所


 在宅療養支援診療所 長期入院患者の退院後の受け皿となる在宅での医療を推進させるため、2006年度の診療報酬改定で新設された制度。24時間365日の対応が可能なため、在宅でのみとり介護(ターミナルケア)の中心的な役割を果たす。現在、全国で歯科を除く一般診療所は約9万9000あり、そのうち約9400の診療所が届け出ている。

 家の中の大掃除を済ませた後、YとNCでラン。昨日の疲れがあるようだ。
4/16
     

医療問題と教育問題 医療問題をつきつめていくと、日本政府・日本国民の長期的戦略意思の欠如を感じるとともに、平和ボケしすぎた戦後教育のつけ(特に80年代からのゆとり教育)がまわってきたと感じることが多い。

 古い資料で申し訳ないが、興味あるグラフを見つけたのでここに紹介したい。
http://www5.cao.go.jp/j-j/wp-pl/wp-pl01/html/13305200.html
 正直、ここまで教育時間が減っていることには、大きなショックを受けた。『71年度(中学校は72年度)と2002年度の年間総授業時数を比較すると、小学校で8%、中学校で17%削減された。』

 また、教育にお金をかけない国=日本という構図も明らかとなっている。(EXCEL fileとなっているが、最後の2つのグラフは興味深い。)
http://www.oecd.org/dataoecd/7/32/37344685.xls
  OECD加盟国中、ここまで教育にお金をかけていないということは、今後の日本を予想する上で重要な要素であるように思う。

 医療も教育の上に成り立っている。医学生教育もさることながら、医師免許を取得した後も、生涯教育が必要となる職種である。しかし天下の御旗印『効率化』の名の下に、医療にも教育にも投資をしないこの国の現状は、今後非常に憂慮すべき事であるように思われる。

4/17
     

銃社会アメリカ−33人の命−

 まず、今回の事故で亡くなられた方のご冥福をお祈りしたいと思います。

 昨日からの全米のニュースは、Verginia Tachばっかりであったのだが、やはりこのニュースを忘れてはいけない、この事実を隠してはいけないと思い、あえてこの写真を選んだ。犯行に使用されたものと同型、オーストリア製で、犯行の36日前に$571で合法的に購入。私のサイトを見られている方々にも、これがいろいろと考えるきっかけになればいいと思う。


 今後も銃規制の話が論議の場にあがってくるとは思うが、イラクで戦争をしているのもアメリカ、国内でこういったことが起こりうるのもアメリカである。アメリカの良い面ばかりが日本に報道されている傾向があるが、こういった影の部分も忘れてはいけない。


 RVAD implantation。
4/18
10.0
Jog
  続報、そして183人の死
 昨今は情報化社会であるので、当然のことではあるのだが、実行犯からのビデオレターが(投函は第一・第二犯行の間)メディアに届き報道されている。上の拳銃を握る姿もニュースとなっている。また、銃撃の中で奇跡的に生存した生徒のインタビューも、生々しく報道されている。
 そんな中、この事件とは全く関係は無いのだが、Baghdadでのテロにより183人の犠牲者が出たことが伝えられた。私は心臓外科医であるということもあるのだが、183人の命、33人の命を助けることの大変さ・命の重みを、我々の仕事の中で自覚しているつもりだ。こういった生のニュースを見聞きしていると、非常に憂鬱な気持ちになる。
4/19
       少し家事疲れと風邪のため、つらい。
4/20
      日本の医療崩壊の一因 非常に納得の出来る井関先生のコメントである。たった2人で、透析・救急・病棟(170床)・外来を行っていたのである。本来ならば国民レベルから真剣に今後の医療の青写真を描いていかなければいけないのだが、、、。

 もう一つのサイトは、何とか2人の医師に来て頂いた現在、性懲りも無く、再度救急を受け入れよと行政側からの圧力を報じている。なぜこのようなことになったのかが、行政側は全くわかっていない。

http://iseki77.blog65.fc2.com/blog-entry-1642.html

 夕張市民は、被害者だけではない、加害者の面がある。


 一部の夕張市民は、最後まで残った2人のドクターに対して、感謝の気持ちはおろか、罵倒の声を浴びせた。


 一部の患者の暴言に対して、その他の夕張市民はたしなめることをしなかったのは事実である。


 夕張市民は、このことを認識すべきである。

http://blog.livedoor.jp/iryoushisuken/archives/50700545.html

 上気道炎のため、声が出ずしんどい。
4/21
8.0
Jog
   論文をだいたい仕上げた後、風邪だが、キャンプに出撃する。
4/22
       Ohioの春祭りに参加する。
4/23
       HRVに関する論文#1完成。すぐにHRV#2にとりかかる。
4/24
      損害賠償補償費用の高騰 日本は自由診療ではなくて、診療報酬によって医療費はコントロールされているのだが、裁判に関してだけはこの辺りを完全に無視してAmericanizeされていっている。最近では簡単に一億円などの賠償金支払い命令などが出ているのだが、その症例自体の多くは確率論によって発生する問題であり、個人の力ではコントロール出来ないような問題が多い。
 勤務医はお金を持っていないから病院を訴える→かといって今や病院もお金が無い→場合によっては医師個人に責任を転嫁して賠償させる。この国のおかしなところは、誰もが無いものねだりのくれくれ状態で、何か起こったら誰かに責任を転嫁しようとする。ならば、その賠償費用*発生頻度の金額を全ての患者さんに上乗せ出来れば話は早いのだが、国はそれもさせてくれない。ならば医師免許を発行している責任として、国が責任をとるのが筋であるように私は思うのだが、いかがだろうか?

 最近、私の地元の兵庫県の医療崩壊が激しい。心が痛む。

 HRV#2、Discussion partへ。今週中に何とかすること!
4/25
      座間味での医療崩壊 地方切り捨ての現在の日本の医療であり、大勢にはあまり影響しないある離島での医療崩壊ではあるが、医師側と地方自治体側との医療崩壊に対する認識の温度差を、あらわにしている記事であると思い、ここに紹介した。(ニュースの場合、リンク先が消滅する可能性もあるので、魚拓をとりました。長文失礼。)
http://www.janjan.jp/area/0704/0704204122/1.php

怪文書で離島 座間味の“Dr.コトー”(1) 2007/04/21
--------------------------------------------------------------------------------
 ある日離島診療所の医師に怪文書が届いた。結果、医師は辞意を表明、5月いっぱいで島を去ろうとしている。医師の名前は饒波保(のはたもつ)さん。沖縄県座間味島の診療所で唯一の医師をされている方だ。


 3月15日(木)饒波さんの自宅に封書が届いた。その茶封筒には宛先が印字された朱で塗られた紙が貼られ、一見して不吉な印象を与える。中にはA4サイズの紙一枚、印字された内容はこうだ。
--------------------------------------------------------------------------------
(ここから文書の内容)
平成19年3月(忌)日
座間味村 ‘五ヶ字憤怒の会’


前略 日頃、座間味島内の村民の命を預かる医師としての貴殿のお働きに敬意を表します。さて、この頃座間味村の人々の口から漏れくる(記者注ママ)風評によりますと、村民に絶対的影響力がある饒波さんが現村長に反対する政治勢力のリーダーとなり、政治的活動をなさっているとのことであります。これが真実であれば極めて忌まわしい事態であり、又、診療所の公務員医師の堂々たる政治的活動は、村政上前代未聞の出来事であります。

 村唯一の知識人としての行動とお考えならば、これこそ傲慢・不遜な行いであり、決して容認するわけにはまいりません。地方公務員である饒波さんが、「無責任な私憤」で法令に違反した政治的活動を行い、村政に介入しキングメーカーを妄想してはなりません。妄想の結果は悲劇的である事を知らねばなりません。かりに饒波さん自身が村長になられるご希望があれば、退職された上での政治的活動は大いに結構なことと思います。

 この度の饒波さんに関わる風評は、一部の不見識・無責任な人々を野合・扇動し、いたずらに村民同士の対立を煽り村政を混乱の坩堝(るつぼ)と化し、結果として村長の「首」を取る計画であると断定されます。饒波さんにおかれては、ご自身のお立場に十分留意され、見識を疑われるような言動・行動を厳に(直ちに)慎まれるようご忠告致します。

 尚、本書の写しを饒波さんの所属長を含む公的機関、及び座間味村内外の村関係者へも、送付する予定であることをご承知おき下さい。
(文書ここまで)

--------------------------------------------------------------------------------
 まもなく村内の数箇所に同じ怪文書が送られていることが判明した。ショックを受け不快感を感じた饒波さんだが、それでも普段通り日々の医療に務めた。

 4月10日饒波さんに沖縄県病院事業局からこの件について問い合わせの電話がかかってきた。怪文書が届いたのだ。病院事業局局長宛に届いたのは以下の内容の文書だった
--------------------------------------------------------------------------------
(ここから文書の内容)
平成19年3月19日
座間味村
有志


前略 別紙(記者注…前掲の怪文書)のとおり、貴局所属の座間味診療所の饒波保医師が、勤務地の座間味村において政争に加担し、人身の分裂を煽っている事実がみとめられますので、同人に対する人事上の処置を即時執られるよう要求します。

匿名による文書をお許しください
(文書ここまで)

--------------------------------------------------------------------------------
 末尾には局長以下各役職担当者の確認印が押され、局内を回覧されたことが見て取れる。

 数日後局の担当者が饒波さんのもとに面会に訪れた。饒波さんは事情を説明した上で辞意を伝えた。饒波さんによると、局担当者はあくまで事情を聴きに来たのであり、饒波さんの医療に対する思いを酌んでくれた上で「先生、守れなくてごめんなさい」といって悔やんでいたという。しかし饒波さんの辞意は固かった。

 以下は饒波さんが眠れぬ夜を過ごし早朝書き上げ、島内に配り歩いた文書だ。
--------------------------------------------------------------------------------
(文書ここから)
 この9年間、私は医療職と言う立場でありながら、村政に対し公的な場や個人的な場でいろいろな発言をし、苦情も申してまいりました。発言のなかには医療や福祉の問題以外にも、この地に住む一住民として、環境の問題、役場の不祥事、情報開示に関する意見など私の専門以外の事に関する注文もありました。しかし、ただの一度も自分の利益のための発言をしたことはありません。また、一時(いっとき)と、いえども公務員と言う立場を忘れたことはありません。


 医療というのはとてもデリケートな職業です。医療側と患者の深い絆(きずな)がないとたとえ短期間でも成り立たないものです。この地に一つしかない診療所にたとえ少人数とは言え受診できない状況、受診しづらい状況を作ってしまったことは私の責任であり、私はそのことで非常に胸を痛めています。

 また、私に対して「村長職を狙っている」と言ったり、「あれはアカだ」などと公言し、一言で片付けようとしている方がおり、それを聞いていてとがめない数名の方々がいることも知っています。また最近になって私に対する匿名の怪文書が私や村内の事業所のみならず県庁にも届けられるようになりました。匿名の文書であることに怒りを禁じ得ませんが、私はこの要求を甘んじて受けることにしました。

 任期半ばにして職を辞することに非常な悔しさを感じますが、これ以上この職にとどまることは大きな失敗に繋がる可能性があります。以上のような心境ですので、私は平成19年5月末日をもって県立座間味診療所の医師としての職を辞することにいたしました。

        平成19年4月   座間味診療所  饒波 保
(文書ここまで)

--------------------------------------------------------------------------------
 昨年8月饒波さんが主催者の1人として関わり開催された「2006座間味村議会議員選挙公開討論会」を私は他媒体で取材させていただいた(注1)。その後も有志で立ち上げた座間味の諸問題と将来を話し合う「チャースガ座間味」(チャースガとは沖縄の言葉で“どうする?”というような意味)に参加し、座間味村に民主的な住民自治を根付かせようと活動される饒波さんに接した印象からして、このまま事が終わってしまうことはまったく腑に落ちない。

 結論を先に述べるなら、今回の問題は饒波さん個人が診療所を辞める辞めないの問題ではなく、座間味村(民)全体の問題であると私は確信している。饒波さんが地元マスコミの取材に対して述べた「一身上の都合」という辞意理由の短い言葉の奥に隠された事の真相を探るべく、以降連載形式で徹底的に書くことにする。結果的にそれが離島の抱える様々な問題、民主主義とは何か、住民自治の困難と可能性などを浮き彫りにすることを期待しながら。

(注1)「南の島に新しい風」


(西脇尚人)

     ◇

編集部注:
「Drコトー」とは、漫画「Dr.コトー診療所」を原作としたフジテレビの連続ドラマで知られる。主人公は五島健助(ごとう けんすけ)という医師で、 わけあって、日本本土から船で6時間かかる離島で働くことになる。島で頼りにされつつも、様々な事件にも巻き込まれる。今回の記事ともオーバーラップする面がある。フジテレビのドラマでは、ロケ地として、日本の最西端に位置する与那国島(周囲約27.49kmの国境の島)が舞台として選ばれている。

http://www.janjan.jp/area/0704/0704244390/1.php

座間味のコトー 離島の真相(2)怪文書は村の不祥事隠蔽が目的 2007/04/25

--------------------------------------------------------------------------------
怪文書で離島 座間味の“Dr.コトー”



 沖縄地元2紙はそれぞれ「座間味の医師辞意」を伝えている。「離島での医師確保は離島県・沖縄にとって大きな課題。同医師の辞職によって座間味村では6月から医師不在になる可能性が出てきた」(琉球新報4月17日付朝刊)。「県病院事業局によると、座間味島から阿嘉島へは船で5分ほどの距離だが、定期船はなく、診療所医師の辞任による影響が心配される」(沖縄タイムス4月17日付夕刊)。

 両記事が伝えているのは「医師不足に悩む深刻な離島の医療問題」だ。県内のニュースでは3月末の国頭村安田(あだ)診療所休止が「医療格差の問題」として伝えられていて、ニュースの受け手としては同じ系統の情報だと捉えやすい。確かに医療が受けられなくなることは地元住民にとって死活問題だ。

 しかし今回の座間味のケースは決して「離島の医療問題」のみで括るべきではない。かといって怪文書に絡む医師辞任劇を殊更スキャンダラスに強調すべきでもない。

 医師はこれまで村に「環境の問題、役場の不祥事、情報開示に関する意見など私の専門以外の事に関する注文」をつけてきたといっている。

 このことが怪文書の書き手にとっては「現村長に反対する政治勢力のリーダーとなり、政治的活動をなさっている」と受け取られたようだ。そこで、医師が指摘する(そして実は多くの住民も指摘する)座間味村の問題を、地元紙の報道を頼りにひとつひとつ見ていきたい。

ごみ溶融炉問題

 琉球新報(2006年8月16日付)は「ハエぷんぷん悪臭も 座間味村でごみ山積み」と見出しをつけ、ごみ焼却場に山積みされたままのごみ問題を伝えている。2003年に開設されたこの溶融炉、当初は1ヶ月おきに焼却していたのだが、燃料の価格高騰、操業委託料が負担となり、2005年10月からごみをためてまとめて焼却するようになったという。超高温で溶融し、資源ガスなどのエネルギーに変え、ダイオキシン類の発生を抑制できるのが“売り”のようだ。仲村三雄村長のコメントとして「お金をかければ毎日稼動できるが、できるだけ安く抑えたい」とある。

 8月31日「座間味村議会議員選挙公開討論会」では、候補者の数人がこの問題を指摘していた。「住民とのコンセンサスがとれていない」「他地域の同じ型の溶融炉を見ると、高知県は既に稼動していない。渡名喜村も停止状態。実績のない溶融炉に9億円もかけたのはおかしい」など疑問の声だ。

 座間味村では一昨年からごみの有料化が始まった。堆肥化される生ゴミ以外の、「燃えるごみ」「燃えないごみ」「粗大ごみ」は有料だ。ごみ回収場には分別して出すことになっているが、回収業者が「燃えるごみ」も「燃えないごみ」もまとめて回収するので、「分別しても意味がない」と住民の意識は低下している。そして「燃えないごみ」も溶融炉で燃やされる???何のための有料化か?巨額を投じた溶融炉の稼動実績は?住民は首を傾げる。

「体験滞在型交流施設」土地売買問題

 「座間味村が2003年に国の補助を受けて整備した同村阿佐大浜の「体験滞在型交流施設」の事業着手前に当時の担当課長が施設周辺の土地を競売で取得し、その1部を村に売却したことは違法だとして住民らが30日午前、当時の担当課長を刑事告発した」(琉球新報・2006年8月30日付)。立場を利用して事業予定地であることを見越し、土地の売買をしたことは地方公務員法に違反するという訴えだ。

 この「体験滞在型交流施設ウハマ」は、村営フェリー内でポスターが貼られていたし、村HPトップにもリンクされている(注1)。地元住民に尋ねると「集落から離れ使い勝手が悪過ぎる。利用者は2度と利用しないだろう」と評判が悪い。実際稼働率も良くないようだ。

役場の裏口座問題

 「1994年度から2005年度にかけて座間味村(仲村三雄村長)が、村の予算である一般会計、特別会計とは別に、執行できなかった予算をプールするための口座を設けていたことが7日までに分かった。元収入役で現在、出納を管理する高良豊村助役(収入役は廃止)は『収入役に就任した95年に前の収入役から引き継いだ』と別口座の存在を認め、『地方自治法に抵触する行為で、責任は全面的に認める』と話している。

 仲村村長は「債務負担行為の命令はわたしがするが、金の出入りについては機関が別なので知らなかった。事実を知った時点で厳重注意し、口座を処分させた」と述べた」(琉球新報・2006年10月8日付)。

 その後、村内宿泊施設の固定資産税への立て替え、村職員への生活資金貸与などにも口座が利用されていたことも判明した(琉球新報・2006年10月11日付)。

淡水化施設導入問題

 離島の公共機関、宿泊施設を訪れると節水を促す貼り紙が目につく。貴重な水資源はどの島でも大切にしている。少雨による水不足とシーズンでの観光客利用の需要増加などで事態は深刻だ。座間味村では渇水対策として海水淡水化施設導入を検討している。2006年12月17日付沖縄タイムスでは、説明不十分、財政負担の大きさ、環境影響などを懸念する声が村民から上がっていることを伝えている。

入島税の使途

 2006年12月17日付沖縄タイムスでは、仲村村長が法定外目的税の「美ら(ちゅら)島税(入島税)」導入の意向表明をしたことを伝えている。これに対して住民からは使途について、徴収方法について疑問の声が上がっている。

公債比率悪化問題

 「地方自治体の収入に対する借金返済額の割合を示し、財政状況を表す指標となる実質公債費比率が、座間味村は2008年度に37・7%までに悪化することが17日までに分かった」(沖縄タイムス・2006年12月18日付)。35%を超えると補助事業も制限されることから、厳しい財政運営が想像される。

百条委員会報告

 裏口座問題を追及する座間味村財政調査特別委員会(百条委員会)の報告について2007年3月10日付琉球新報は伝えている。これによると同委員会による真相究明、「誰が何のためにこのような金の操作を行ったのか明確にされること」が期待されたがそれは叶わなかった。「その理由として請求資料が揃わない、調査委員会が資料閲覧する際に監視をつけないと閲覧させない」などがあったそうだ。

 同記事の結論をいささか長いが引用させていただく。それが冒頭「離島の医療問題」ではないと述べた、それでは何なのか?の答えとして相応しいと私は思う。

◇ ◇ ◇

 「今回の一連の問題も含め、座間味村では2005年から役場職員の不祥事が相次ぎ、住民の行政不信が募っている。村を取り巻く財政状況も厳しく、抱える課題も多い。住民の理解と協力なくしては課題解決は不可能だ。村側は今後、事件の全容解明に全力を尽くし、住民への説明責任と部下の監督責任を果たす必要がある。そして住民を主体とした透明な行政運営が求められる」

◇ ◇ ◇

 これら役場の不祥事、村全体の課題を受け止め、住民有志でざっくばらんに語り合う場、それが医師らが参加していた「チャースガ座間味」だ。説明責任、情報開示を怠る村政に任せるだけではなく、自分たち自身の問題と捉え、課題を解決していこうという自治の思想がそこには見える。もしかしたら座間味村が先進的な地方自治の村になる可能性、それを潰そうとするいかなる理由があるのか知りたい。

(注1)
体験滞在型交流施設ウハマ

(西脇尚人)

 HRV#2論文の完成。次はShort communication用の短いやつ=device developmentについて書くこと。今日は不在のボスに代わってのプレゼン、久しぶりにご飯を作らなくて良かった。
4/26
      Appointment letter受領 本日Appointment letterを頂き、7月1日よりCleveland Clinic, Cardiothoracic Surgeryで働くことが決まった(と思う)。 心配していた給料だが、事前情報でのJ-1 VISAでの給料よりも良く、逆に現在の給料よりも頂けることになり、一つの憂いが無くなった。 そういう意味でも、Step 3に合格する(H-1B VISAとしてのFellow positionを得る)意義はあるようにも思う。

 これからは、この外科医としての腕と英語の会話力で勝負していかなければいけない。今まではややこしい問題に対しては、ボスとの会話は全て日本語で行ってきたのだが、これからは頼るのは自分だけだ。私の腕に託された多くの諸先生方からの教えを思い出し、そしてJapolishでは無い本物の臨床での英語力を磨くようにして、がんばっていきたいと思う。

 最後に、この日記を読まれている方には、非常に感謝したい。(いつ死んでも悔いの無いように、)私自身の生き様を記録して、子供に伝えることをも目的として始めた日記だが、実は多くの人に読んで頂いているのを私も知っている。そして読まれていることから、逆に私が勇気をもらっていたように感じる。

 7月からは大きく世界も変わろう、嫌な事も多かろう。しかしまた新たな目標を持って、一日一日を振り返り、今後も日記をつけていきたいと思う。
4/27
       論文のreviseなど。夜からPeak hunting travelに出撃。
4/28
       旅行。
4/29
       旅行、未明に帰還。
4/30
       Yを背中にしょってのトレイルだったため、疲労がたまっている。
  
 
40.8km
     ゆっくり骨を休めた4月であった。あの生活に戻ることへの期待と不安が交錯するが、自分と家族にとって何が一番ハッピーかを考えながら自分の思う道を歩みたいと思う。(しつこいようだが言葉を返せば、医師としての誇り・充実感のためだけに医療を続けていた日本での医療には、現在の末期的状況を考慮すれば、そのまま戻ることはあり得ないように思う。)

 Cleveland Clinic, CT Surgeryは12年連続全米Nomber 1に選ばれている施設である。その教育・研修内容については意見も別れようが、その中の一員に選ばれたことを誇りに思い、何故Number 1を12年も維持できるのかを、しっかりとこの目で勉強しようと思う。


HOME