Running (2006.11)


月日
曜日
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内容
タイム
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11/1
       RVAD,LVAD implnatation、moderator bandを切る方法を他に考えなければいけない。実験は長時間、data pointは91、なかなか疲れる実験だったが結果は良好だ。chronic studyに移行する予定。
 疲れてちょっと目を通しただけ、Psyは物語を読むようで、時間がかかる。
11/2
       実験お手伝い、データ整理。一昨日の答え合わせだけ。残念。

 さて、この『Residency Program』人生ゲームだが、今のところ苦戦中だ。予想していたことだが、USMLE点数もsuperでは無いFMGにはなかなか厳しい選抜だ。どこかでFellowにはなれるように、コンタクトをとり始めなければいけないようだ。人生は厳しいです。
11/3
      夜間・緊急診療費徴収 日本の医療費を増加させ、勤務医の激務、ひいては医師の眺散を助長している原因の一つが、夜間・休日の『コンビニ外来』である。私も病院に勤務時代には、『日曜日に手術説明をお願いします』、みたいな事を平然と言われたこともあったが、『患者中心の医療』があまりにも浸透してきたための弊害であると思われる。
 昨今の小児科医・産婦人科医不足から、夜間の緊急体制を維持するのが非常に困難になっているが、そういった翌日受診でも構わないような『コンビニ外来』を減少させる最後の手段として、夜間・緊急診療費徴収が取りざたされている。我々医療側から見たら、これも止む無し、と思うのだが、しかし一般の方からすると、『何事だ!』ということになるそうだ。
 何とか今の医師不足の現状を一般に広めていき、理解をいただけるように声を出し続けなければいけないのだが、日本のようにいつでもどこでも安価に受けられる医療の幸せを、日本のコンビニ医療しか知らない人に理解してもらうには、なかなか難しいことであることを感じる。日本に帰国した際に、人々が街の喫茶店などでのんびりと\1,000以上のケーキセットを平気で頼んだり、値段だけ高いブランド品をちやほやしている姿を見ると、\5,000の徴収費ごときで、『この世も終わった』、などと批評されたくないものだと思ってしまう。命にかかわる人間の体の問題に対して、あまりにも安価に考えているような気がする日本である。

(話は少しとんでしまうが、喫煙者加算として、4倍の医療費を請求できるような制度の確立は、保険制度の不公平の改善だけではなく、健康に対する国民の意識改革に多大な貢献をするものと思われる。)


 朝起きたら、外は再び津軽海峡冬景色だった。11月初めだというのに、、、。データ整理や雑用など。50/50問、Psy終了。ちょっと問題の構成・パターンがわかってきたような気がする。
11/4
      逃散の一つの理由 報酬の無い時間外・長時間労働(当直)、訴訟、マスゴミの不当な報道、警察の介入、、、原因は決して一つでは無いのだが、患者さんからの一言というのは、もしかすると一番の理由なのかもしれない。

 以下は、フィクションと考えていただいて構いませんが、こんな話が起こりうるのが実情です。一般の方にも逃散の理由の一つが判ってもらえるのではないでしょうか。



産科の女医です。
経膣分娩後、出血が止まらず、保存的に粘っても止血できず
開腹止血を試みたのですが最終的に苦渋の選択で
子宮全摘となってしまいました。
(総出血量12000mlを超えてしまいました)
病理では子宮頚管付近のAVMが原因だったみたいです。
(最終的には不明でした。子宮破裂もありませんでした)

DICも起こしていたため、病院に泊まり続け
外来以外はICUに詰めて食事ものどを通らず、
ずっと頑張ってましたが
田舎から来た妊婦さんのお父さんにICUで
胸ぐらをつかまれ、
「てめえの子宮を取ってここで土下座しろ!!」
とどなり倒されました。

児はもちろん(普通の分娩でしたから)
母体も救命できたのですが、子宮を取ったことは
どうしても納得いただけず、
「自分の子宮じゃないから気軽な気持ちで取りやがった」
と最後までいわれました。
(もちろん、帝切にしなかったことも非難されました)

この言葉はしばらく引きずりました。


 医療における信頼関係。これだけの医師に対する逆風の中、これが第一線で踏みとどま医師にとって最後の砦のように思います。

 外科100/150問で、850問のQb終了。まずは第一段階突破。
11/5
6.0
Jog
61.8
在宅血液透析 Step 3は、各症例から治療法などを問う問題が多いのだが、今日は『目からうろこ』の問題を経験したので紹介したい。
 
ttp://en.wikipedia.org/wiki/Home_hemodialysis

 私の勉強不足なのであろうが、『透析は病院で』、という固定概念があったが、長距離を移動しなければいけないアメリカでは、病院で血液透析をするのではなく、この在宅血液透析が普及しているそうだ。自分の生活スタイルに合わせて週三回の透析を行うことが出来るし、慣れてくれば寝ている間に行うことも出来る。透析にかかる人件費も節約出来るというわけだ。ちなみに日本では100人程度だと聞く。非常にアメリカらしいアイデアだと、妙に納得してしまった。

 朝早くから勉強した後、野菜畑を冬に備えてきれいにした後、買い物&ランに出撃する。勉強したくてたまらないのだが、Arstrongが話題をさらっていたNY marathonのニュースを聞くと落ち着かなくなってくる。遅いスタート時間、前半のもの凄い人、いくつものブリッジ、最後のCentral parkでのアップダウン、あのコースは"One of the hard marathon courses in the US"なのだが、レースの雰囲気は世界最高であるだけに、是非私もいつかは3時間を切ってあのコースを走ってみたいものだ。
 USMLE(CD)96/246問。7割くらい、まだ改善の余地はありそう。問題文自体は短いので、時間も余るのだが、本番はこんなもんでは無いに違いない。
11/6
       10/31にアクセプトされた論文は、実はJCVSの孫Journalへのアクセプトだったことが判明、丁重にお断りする。月曜日はmeetingx3。48/294問、模擬試験終了。7割弱といったところ、特にEthicsに改善の余地があるような気がする。
 KAPLAN、Q bankを受講する予定だが、電話の対応非常に悪し。
11/7
       昨日の論文をHSFに投稿、依頼されていたReviewを終了、お昼に懸案の歯の治療、必須講義、KAPLANの対応非常に悪し、コースを始められない。歯も少し痛むので、今日は大人しく就寝する。
11/8
      救急医 大学病院に勤務していた頃から、救急疾患に関しては多くの患者さんに接してきた。頭部・胸部・腹部の優先治療方針を迅速に決定させるとともに、時には肺塞栓→Vf→PCPSを迅速に導入して、手術室に搬送して救命することもあった。しかし、残念ながらそういった多くは帰らぬ人が多かったのも事実である。

 少し古い救急医療に関する判決文なのであるが、いろいろと学べることが多い判決文である。

ttp://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20061108

 これは平成5年の事故である。ちょうどこの時期に医師になった私としては、この頃の医療事情をよく理解しているつもりだが、心嚢穿刺を出来る脳外科医なんて、いるはずもなかった。『救急医』を看板にする医師も、その当時は非常に少なかった。これは3年前の大阪高等裁判所(民事)の判決なのだが、判決文自体には特に不自然に思うことは無い。しかし、これが『真実』とされるならば、救急診療体制自体をこの判決に従って変えていくのが『政治』であろう。

 具体的には、救急指定病院の厳密な認定、救急医の育成、救急治療疾患に対する保険点数の更なる重点化などであろうが、一体何が行われてきたのであろうか?  USMLE Step 3の問題にもあるのだが、例え診断が間違っていたとしても正当なフローチャート(決して後出しじゃんけん理論ではない)で正当な治療が行われていれば、結果が悪くてもアメリカでは『non liable』なのだ。『人』、『箱』、『システム』、現在の日本では全てが社会の需要から離れていっているように思う。

 本命から待望のInvitation letterが届く。今日は実験お手伝い、20/314問。
11/9
      アメリカ中間選挙 アメリカの大統領選挙は4年毎であるが、下院議会(House)の選挙は2年毎に、上院議会(Senate)の選挙は6年毎(1/3ずつ選挙)に行われる。また同時に、知事選挙も行われる。

 さて前回の大統領選挙では、どうしてブッシュになったのか皆不思議であったようだが(Kellyの選挙方針の失敗ともいえよう)、今回の周囲の雰囲気は『ようやく、変わることが出来る』、という安堵感で一杯であった。あれだけのお金をイラクに使用しながら、我々Researchに対する支出をかなり絞っているのにも、我々の辛口の論評は影響しているのかもしれない。イラク・石油・北朝鮮・イラン、難題は山積みで、まだまだ解決しなければいけない問題も多いのだが、現在のままではいけないという世論を正に反映した選挙結果であるといえよう。

 今日も実験お手伝い、隣でLiver transplantがあるのでのぞきに行ったら、何とGeneral Surgery, Department HeadのDr. Fが来られていた。昨日の今日の話だが、私の名前を覚えていてくれて感激してしまった。もし採用されなかったとしても、こういった人と話す機会が得られるのは、光栄なことである。
 A,B 65/379問。(A先生、問題ありがとうございます!)
11/10
5.0
Jog
 

アメリカ医療の現実 今後日本はイギリス型の崩壊をしていくものと思われるが、政府の主導している(であろう)アメリカ型の医療・保険制度が導入されてくると、どういうことが発生してくるのだろうか? 『アメリカ医療の光と影』は、あまりにも有名な連載であるが、このHPもアメリカの実情を症例をもって説明しており、実感が沸く内容であると思う。

ttp://www.asahi-net.or.jp/%7erp8i-fkm/managedcare.html

 日本の医療制度・医療水準はある意味素晴らしいとは思うのだが、国民はどれくらいこの医療の現実を認識しているのであろうか?

Meetingx2いろいろ、Yを拾ってMetroparkでラン、C50/429問、眠い!

11/11
8.0
Jog
  院内感染 外科を志していると、どうしても避けて通れない身近な問題であるが、まだまだ勉強しなければいけないこと、改善しなければいけないことが多いと考えさせられてしまう。

 日本の病院経営の場合、『院内感染対策に投資する』という意識が少ないように思う。感染が生じたとしても保険が使用できる(病院のマイナス出費にはなりにくい)、原因→結果が今ひとつはっきりしない、対策にかけるコストをどこから持ってくるのかが不明、、、いろいろな要因があろうと思うが、特に地方公立病院などのお金の自由が利きにくい所では、尚更であろう。こういった初期投資を行うことにより、早期退院・訴訟リスクの軽減・風聞の改善などが得られると考えられるのだが、医療をこういった経済的側面から考えてみると、何やら自動車産業の先行投資のようで非常に興味深い。

 病院幹部そして現場での院内感染に対する意識が一番重要ではあろうが、ただし医療が完全に自由経済の上に成り立っているのでは無いことも念頭に入れて論議しなければいけない。『手洗いの励行』と旗を振っていく姿には何ら疑念は無いのだが、本来ならばこういった感染対策を徹底させるためには、ゆとりある診療(時間・経費)が一番の根幹にあるべきだと考える。増え続ける医療業務、社会から要求される高い医療レベルの維持、右肩下がりの医療費、こういった問題も考慮して院内感染に関する報道を読むと、また違った一面が見えてくるであろう。

ttp://iseki77.blog65.fc2.com/blog-entry-362.html

 非常に興味深いコメントであると思う。

 朝から勉強、小雨の中、朝から郵便局に走って荷物を取りに行ったら、休みだった。昼からYの誕生日会のスケート場へ。実は生まれて初めてのスケートで、はしゃいでいたのは私だが、スキーの要領でまあまあ滑れた。しかし調子に乗ってスピードを出すと、思いっきり氷に叩きつけられてしまった。
 CCFでUrologyをしているインドからのレジデント(お父さん)がいるのだが、『レジになるのは長期計画で』、という言葉が印象的であった。グリーンカード、アメリカでの臨床経験のポイントが高いそうだ。D,E 70/499問、カフェインでがんばりたいのだが、眠くなってしまう。Step 3は、問題文が長いのと、全てtwo stepの問題なので、まだ一日の問題数が稼げない。答え合わせも含めると、50問/3時間といったところか。
11/12
8.0
Jog
   EFG 105/604問、消耗する。頭の回転・生活のリズムを改善するということで、少し走ってみることにした。来年の勤務先が早いうちに決まるということであれば、4月のBoston、5月のClevelandに出走してみようと思う(昨年のTowpathの記録でいけるのだ)。
11/13
      創作童話『パンダと白熊』 パンダ(=産科医)絶滅の話だが、我々医師の立場からすると、非常に良く出来た童話だと思うのだが、一般の方からするとどんな風に感じられるのでしょうか? 是非一読されて、感想をお便りいただければありがたいです。ちなみに、白熊は婦人科医、みの虫はみの○んたです。

ttp://d.hatena.ne.jp/reservoir/20061022

 何も絶滅危惧種はパンダに限ったことではないようで、『象やライオンも数が減っている』ようです。果たして自分はいったいどんな動物なのか?、いったい何回転できるようになるのであろうか?、日本に帰ったらどんな動物園に行くのだろうか?、餌は?観客は?ミノムシは?、家族との時間は?、などと馬鹿なことを考えてしまいます。しかし昔パンダだった知り合い達も、みんな白熊になってしまった。残念ながらパンダの友人は、、、もういないです。(参考:日本のパンダ数=6,000?、これに対して110万人の観客。我々心臓外科+術後管理医2,000-4,000?、これに対して5−6万人の観客。)

 Patent関係の書類、突撃メール、あまりに予想外の問題が出てきてG 15/619問。本日より、お昼時間に外科系リハビリを開始することとする。
11/14
      東京における産科崩壊

2006.01 江東病院 ttp://www.koto-hospital.or.jp/
2006.04 国立精神・神経センター国府台病院 ttp://www.ncnpkohnodai.go.jp/kohnodai.html
2006.09 東京都立豊島病院 ttp://www.toshima-hp.metro.tokyo.jp/index.htm
2006.10 災害医療センター ttp://www.hosp.go.jp/~tdmc/welcome.htm
2006.11 東京都立墨東病院 ttp://www.bokutoh-hp.metro.tokyo.jp/index.html
2006.12 東京逓信病院 ttp://www.tth-japanpost.jp/

  以上、全て産科の手術を取りやめた(又は取りやめる)施設である。兵庫県中部で、ドミノ倒し的に産科が閉鎖されたのは記憶に新しい所だが、とうとうここまで来てしまったのかということで、背筋が寒くなってくる。
 100人が99人になっても、大きな変化は起こりにくい。しかし10人が9人になったら、じわじわと残された人達の負担は増加していく。パンダは確実に減少している。この福島・奈良事件報道の後だけに、来年4月に子供パンダが増えるとも考えにくい。残された手は、白熊さんに模様替えしているパンダさんに、早急にもとのパンダの姿に戻ってもらうことなのだが、、、。来年4月までに今後ドミノ倒し的に、東京東部に飛び火するものと推察される。行政による緊急対策が必要である。

 Patent書類、リハビリ。GHI 85/704問。日本のニュースを見ていると、こちらまで暗くなってしまう。私には、この国の医療がどこに向かっているのか本当にわからない。
11/15
      私がディレクターなら、、、 『東京の産科医療崩壊』、というタイトルか?
1、イントロは関東圏の実情と、最近閉鎖したまたは閉鎖されそうな産科病院を、地図化して表示する。『今、産科で何が起こっているのか?』 凄い地図になるのでしょうね。
2、群馬→山梨ヘリ搬送、神奈川→千葉(亀田総合病院)搬送の事実をそれぞれ示す。
3、原因の推測 A: 産科医の数の減少、B: 労働基準法を無視した劣悪な勤務状況、C: 勤務医師間では均一な、安い給料体系(年金・退職金の無いことも触れる)、D: 国の医療費削減の影響、E: 昨今の医療訴訟、(F: マスメディアによる偏向報道、これは難しいか)
 これを、それぞれ掘り下げながら分析。
4、対策 3人ぐらいの産婦人科医師・3人ぐらいの現場の声からの、具体的な生の声を入れる。時間のある番組ならば、討論形式もいいだろう。
5、結論 この問題は複雑な多くの問題がからみあっているのだが、実は産科に限った問題では無いと思う。小児科・外科・救急などの科にも、今後遅かれ早かれ問題が生じてくるものと思われる。国民の医療崩壊に対する認識とともに、早急な対策が必要と考えられるのではないだろうか?、、、結論というよりも、世間へのOpen Questionという形で問題提起する、そんな番組が今まさに必要であるように思う。

 いまだ奈良の事件の報道を、家族からの映像だけで感情論に持っていこうとするメディアを見ていると、全く日本に未来は無いものと考えられるのだが、、、。やるせない気持ちになるのは私一人であろうか?

 RVAD、 I+@ 30/734問。
11/16
      無過失保障制度 とうとう政府が、重い腰を上げて設立を決めたようだ。しかしこのニュースをみると、政府がいわゆる『丸投げ』の姿勢で、真剣な対応を考慮しているとは全く思えない内容である。


出産時事故「無過失補償」導入へ 民間保険活用

記事:毎日新聞社
提供:毎日新聞社

【2006年11月17日】
出産時事故:「無過失補償」導入へ 民間保険活用、医師が費用負担

 政府・与党は17日、新生児が脳性まひで生まれてくるなど出産時の事故に関し、医師の過失を立証できなくとも患者に金銭補償する「無過失補償」制度を、07年度に創設する方針を固めた。民間保険を活用、保険料負担は医師に求めるが、負担増対策として健康保険から支払う、現在35万円の出産育児一時金を2-3万円増額する。新生児1人につき2000万-3000万円の一時金を補償する方向で調整する。

 財源に関し、日本医師会は税負担を求めているが、与党は「国が直接かかわる話ではない」として、親に支払う出産育児一時金を活用することにした。一時金を増やせば、やがて出産費がアップし、その分医師の収入増につながるため、医師に保険料を負担してもらう構想だ。

 民間保険会社に新たに「無過失補償」の商品を企画してもらい、産科医が任意加入する形をとる。保険料の決め方などの詳細は今後詰める。先天性異常の場合は、補償対象としない。将来的には、自動車損害賠償責任保険のような強制加入の制度に移行することを想定している。

 政府は、出産育児一時金を37万円にアップすれば、医師全体で約200億円程度の増収となり、事故一件につき2000万円の補償が可能になるとみている。

 政府は補償金に税投入はしないが、民間保険会社の支払い審査、原因分析といった事務費の半額、数億円を「少子化・医師不足対策」名目で税負担する。

 医療事故に絡む民事訴訟件数は年々増えており、04年は1110件と10年前に比べ倍増している。なかでも産科(143件)は、件数こそ内科などに次ぐ4位だが、医師1000人当たりでは11・8件と最も多い。このことが産科医のなり手不足を招いている、との指摘がある。【吉田啓志】


 記事の要点をまとめてみよう。
1、財源=医療サイド
2、負担民間保険活用
3、見積もり=200億円

1、医療サイド負担ということは、すなわちその保険料を患者側に請求すればいいだけの話なので、医療サイド負担と銘打っているが患者負担となる。最低でも3万円、恐らく5万円以上の負担を患者側が負担することとなるであろう。

 もしこの解釈が間違っているということであれば、全く話にならないであろう。『医師のミス』に対して、患者が払う必要なんか無い、というマスコミの過熱報道が先行するような気がする。例えるならば、新幹線の搭乗保険として、(新幹線が大事故を起こすはずはないから)
乗客はJRが負担するものと解釈するであろうが、飛行機の搭乗保険としては、(飛行機も墜落することはあるのだから)乗客は自分が負担することにしぶしぶ納得するのではないだろうか。『医療の不確実性』が認識されていない日本では、自己負担を増やすことに対して、かなりの抵抗が予想される。 こういったことも加味して、多くの医師がこの報道に怒りを持っているようだ。

2 、民間で保険を成り立たせるためには、決して赤字になってはいけない。諸経費も以上の計算には全く含まれてはいない。更に無過失補償に対する公的認定機関が設定されておらず、民間保険サイドのさじ加減という話になる。言い換えれば、無過失補償を保険会社に訴えたとしても、認められない、金額が出ない(2,000万円は今の相場からすれば安いし、これに難癖をつけて出し渋るのがアメリカ保健医療である)、最悪会社が倒産してしまう、ということがありうると考えられる。不払い妊婦をどうするのかという問題もある。

3、制度の対象となるのが、1,000件、200億円としているが、死産児、CP(脳性まひ)を含めると、決して1,000件では無い。つまり1000人に一人の確立であると計算しているようだが、統計を考慮した場合、もっと多くの件が当てはまる可能性が高い。

 さて、制度からすれば『丸投げ』であるが故に、多くの問題点があるであろうが、これによって、産科医療の崩壊を止めることが出来るのであろうか?医療裁判を減らすことが出来るのであろうか? 残念ながら否であろう。

 そして、このニュースの一番のポイントは、『医師に保険料を負担してもらう構想』と銘打っていることだ。国は自分が悪者にはなりたくないので、『患者に払え』とは決して言っていない。しかし現実は、『国は感知しません、患者で負担して下さい』、と言っているのだ。医療費削減を旗印に進んでいく日本の医療だが、それに対して誰も疑問に思うことなく、誰も異議を唱えない国民に
、私は大きな不安を感じる。

 最後にこれは我々医師側から見た印象だが、『医師の収入増』と書く辺り、『医師対患者』という構図を作ろうとする意図が大いに汲み取れる。医療は信頼関係だと私は今でも信じているのだが、そういったスタンスで医療を行うのはもはや不可能なのであろうか?

 J 50/784問。夜は久しぶりの飲み会。日本の先生とお話することが出来た。

11/17
     

救急体制の崩壊 奈良という地域性も大きく関与しているのであろうが、救急医療体制そのものが本当におかしなことになっているように感じる。

ttp://www.asahi.com/kansai/news/OSK200611180026.html


 奈良県橿原市の県警橿原署の敷地内で、意識がもうろうとした状態で見つかった男性を、通報で駆けつけた橿原消防署の救急隊員が軽傷と判断し、病院に搬送しなかったことがわかった。男性は帰宅後に意識を失い、運ばれた病院で脳内出血などが判明して手術を受けたが、意識不明の重体。同消防署は18日午前、記者会見し、「判断に誤りはなかった」と説明した。

 橿原消防署などによると、15日午前2時10分ごろ、橿原署の駐車場で同県大淀町の製材業の男性(42)が歩いているのを署の幹部が発見。署内のソファに座らせ、同3時ごろに橿原消防署に連絡した。数分後に救急隊員が到着。男性は当時、泥酔状態で、鼻血と左顔面に擦り傷があったが、痛みを訴えていなかったことや会話もできたことから、救急搬送の必要性は低いと判断したという。

 間もなく駆けつけた男性の家族が病院に搬送するよう求めたが、救急隊員が「軽傷の場合は搬送先を探すのに時間がかかる」「自宅で様子を見たらどうか。何かあれば救急車を呼んで」などと伝えると、家族は納得して連れ帰ったという。

 だが、朝になっても男性が目覚めないため、家族が昼ごろ、地元の消防組合に通報。男性は搬送先の病院で脳挫傷などと診断され、手術を受けたが、意識不明の状態が続いている。男性の父親は「頭を打っているかも知れないから、搬送先を探してくれと何度も懇願した」と憤慨している。

 高橋善康・橿原消防署長は「当時の救急隊の判断は適正だったと考えている」と話している。



 このニュースの裏側にある真相に、住民は気がつかなければいけない。自己管理能力の欠如(午前2時に泥酔はいかんでしょ、アメリカなら死んでますよ)、自己責任転嫁、コンビニ感覚の救急車・救急病院利用(これが一番の問題)。こういったことの積み重ね、および大淀病院事件に対する救急指定病院の出した答えは、『更なる逃散』なのである。(奈良大淀の異常な報道過熱に比べれば、至って平凡な報道であることに、少し驚きと憤りを感じる。それからもう一つコメントするとすれば、救急車利用は早く有料化するべきである。)

 Virtual fitting study、3D-CT画像上で小児用開発pumpの植え込み具合を検討する。まだ新生児HLHSに入れるサイズではないのだが(開発中)、1歳くらいになれば十分に植え込めそうだ。小児用implantable LVAD/RVADは、患児の体が大きくなるのを待つというBTTとして、大きく期待されるものであろう。67歳の人(実際にあった話)にHTxするよりも、小児に移植を進めていってほしいものだ。K 50/834問。
11/18
13.0
Jog
 

日本医師国家試験とUSMLE (United States Medical Licencing Examination) 現在Step 3に向けて勉強している身であるが、今日は日米の試験を巡る環境の違いについて述べてみたい。

1、点数 日本は合否だけわかるのに対して、アメリカはその優劣も数字で評価される(除:Step 2 CS)。この点数は一生付きまとう数字なので、学生は真剣に勉強することとなる。

2、受験時期 日本は6年目の最後一回、アメリカは学生の時にStep 1, 医師になる直前にStep 2, Resident時代にStep 3というのが一般的だ。

3、傾向その1 日本の試験は、重箱の隅をつついた内科の稀な疾患などを扱った病気が多いのが特徴だ。それに対してアメリカの試験は、Step 1=基礎、Step 2=診断、Step 3=治療といった段階になっており、総合力が求められる印象がある。

4、傾向その2 特にStep 3で顕著だが、経済的・緊急性から優位度を選ばせる問題が多い。

5、傾向その3 日本の卒後医学教育は、何でも出来るスーパードクターを養成しようとしているように見える。アメリカもその傾向はあるのだが、ある時点で『consult』になる。私自身、エコーアンギオ何でもやれる環境にいたせいか(特に日本ではエコーは聴診器にようなもの)、どこまで医師としてやるべきなのか、微妙な疾患に対する診断が先か治療が先か、どこからが専門外として上にconsultするべきなのか、Step 3の問題を通して日米の違いを痛感している。個人の力を重視する日本に対して、チームとしての力を重視するアメリカ、何やら太平洋戦争がだぶって見えてしまう。(この答えは違うやろ!という問題は日常。)

6、難易度 強がりではないが、決してアメリカの試験は目茶苦茶難しいとは思わない。英語だということで、かなりのハンディはあるが、アメリカの(馬鹿な)学生がパスする試験に、我々日本人が合格しないはずが無い、という気持ちで臨んでいる。(無茶苦茶優秀な学生がいることも確かだが、Big mouthが多い。)

 書き上げたらきりが無いくらい日米の試験の相違は多いのだが、日米の医師免許を取得し、日米の基礎研究を経験し、日米の臨床(+研究)を経験(予定)し、ひいては日米の文化の違いを感じ取ったそういった眼で、日本のいいところ・悪いところ、アメリカの利点・欠点を把握し、それを日本の医学に貢献することが出来ればいいと思う。

 週末は勉強が楽しい。LMN 115/949問。風邪がしんどい。

11/19
       NOP 96/1,045問。ようやく1,000問突破で、合計1,745問となったが、まだ修練が必要に思う。6,000問くらいはいかなければいけないか。ただ先が見えてきたようにも思うし、別に今急いで試験に通る必要も無いので、今度の連休はゆっくりYと過ごしてやろうと思う。
11/20
      Perfume 今日は医療問題の堅苦しい話は避けて、今日覚えた単語を一つ。香水のことだが、私には全く必要の無い言葉でもあり、知らない単語の一つであった。実は同じラボにドイツから来たFellowがいるのだが、彼はperfumeを使用している。私も当初は慣れなかったが、文化の違いなので特に気にもしなくなっていた。ところが、今日廊下で彼と話していたら、突然アメリカ人女性が歩いてきて、『お前の香水は鼻につくんじゃ、アレルギーにもなるから辞めてくれ!』だって。
 香水はAfrican womenが良く使用してはいるのだが、ここまで人のことに対して難癖をつけます? 自分の部屋のドアを閉めたらええやん、と思いません? しかし、これがアメリカ人女性です。表向きは男女平等ですが、あごの出たこの態度はアメリカ人女性特有、悪く言うと自己中心、よく言えば自己主張をしっかりする人、いろいろなことを学んだ一日でした。

 Meetingの月曜日、Autopsy、P 35/1,080問。民族大移動の用意を開始する。
11/21
      休日の医療 日本の医療がまさに音を立てて崩壊している中、未だ何ら有効な打開策が見出されていないが、またもや気になるニュースが飛び込んできた。



ttp://mytown.asahi.com/mie/news.php?k_id=25000000611180002

桑名市民病院 脳腫瘍悪化の患者と和解
2006年11月18日

 脳腫瘍(しゅよう)が悪化して重い障害を負ったのは、病院が適切な検査をせずに病気の特定が遅れたからだとして、桑名市の20代の女性が05年8月に桑名市民病院を相手どって2千万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に起こした訴訟で、病院は17日、女性に和解金300万円を支払うことで和解したと、発表した。同地裁の和解勧告に従った。

 病院によると、女性は02年の10月30日と11月2日に頭痛やめまいなどを訴えて来院。3日に水頭症や脳がんの疑いがあると診断され入院。5日のMRI検査で脳腫瘍が判明した。当時は歩行できたが、その後、悪化し、現在は植物状態という。

 訴訟で女性側は、最初の来院でMRI検査をして脳腫瘍を特定し、適切に治療すれば、治癒の可能性があったと主張。病院側は女性の病状は11月5日時点で改善の見込みがなく、6日前に脳腫瘍が判明しても結果は同じで、診断に問題はないと反論していた。

 名古屋地裁は、病院の診断に誤りはないとした上で、「早期のMRI検査で的確に診断していれば、その後の対応が変わった可能性があり、もう少し良い症状が期待できた可能性は否定できない」として今年8月に和解勧告していた。


 10月30日(水)初診、11月2日(土)再診、3日(日)入院、4日(振り替え休日)、5日(火)MRIにより診断、という経過である。不幸な経過をとられた患者さんに、我々医師の力が及ばなかったのは本当に残念ではある。しかし、この経過を見ると連休中(3連休)に非常によくありがちな経過であるように思う。11月2日の再診が平日であったならば、と思いますが。

1、全ての脳腫瘍疑い患者に、MRIを施行する。→お金がいる。(Scan timeを考慮すると、一病院に数台は必要であるはずだ。)
2、全ての市民病院クラスには、必ず24時間稼動可能なMRIを揃えなければいけない。→お金がいる。
3、全ての市民病院クラスには、休日といえども、24時間質の高い医療を提供できる勤務体制(放射線技師・放射線医師・内科医・脳外科医・麻酔科医・看護士)をしかなければいけない。 →お金がいる。

4、全ての脳腫瘍疑い患者にMRIを施行した場合、現行の体制では保険点数削除 が行われることと思われるが、それを全て保険で賄う(または自己負担する)ようにする必要がある。 →お金がいる。

 しかし実際の医療現場では、厳しい医療費削減にさらされている。このparadoxを解決するにはどうすればいいのでしょうか?

 和解でしかないので何とも言えないのだが、訴訟は日常茶飯事ということを肝に銘じなければいけないのでしょう。いろいろと考えさえてくれる訴訟です。『医師は聖職』と言われたのは一昔前の話、この言葉を楯に叩かれる事もありますが、医療も一つのビジネスであり、私も今後意識改革が必要なのでしょうね。

(追伸:昔からトンデモ訴訟やトンデモ判決を目にすることはあったが、1、最近こういった訴訟が更に増加しているように思う、2、Internetの発達でマスゴミを介さずに情報が流通している、3、医師側がかなり過敏になっている。
 特に2、Internetの発達には目をみはるものがある。医療崩壊を助長するのか、それとも食い止めるもになりうるのか? それはわからないが、使い方によっては、非常に利用価値の高いネットワークを構築できると思う。具体的には、日本全国の心臓外科医・心臓センターをネットワーク化して、手術成績を公表することも勿論だが、Death conferenceのようなものを立ち上げて、学会ならずとも活発な論議が行われ、それを情報として蓄積していければ非常に有益であろう。臓器別訴訟リストも、非常に有用であろう。
 また、若手心臓外科医の声などを集約出来る場所にもなれば、心臓外科のかかえる多くの問題を解決出来る糸口になるような気がする。)

 PQRS 114/1,194問、ふらふら。
11/22
      発想の転換 医療はビジネスではあってはいけないという固定観念が、我々医師側にはあるようにも思う。事実、国民も未だ『あかひげ先生』を熱望したり、『医師は聖職』である(からけしからん!)という意見も見られる。しかし周囲を見渡した場合、その財源の大元である政府がビジネスライクに考えているし、訴訟もしかりである。
 もっと 割り切った医療をしていかなければいけないのであろうか。『医療崩壊』の小松先生の言葉が重く心に響く。『開業医?勤務医?』、『今なら?そもそも医者にならないね』。

 連休はゆっくりと家族で過ごすことした。最近睡眠不足が続いていたのだが、ゆっくり休養してこようと思う。S 20/1,214問。夕食をとった後、南下を開始する。
11/23
       SCのCharlestonへ、もう少し暖かいと思ったが、曇り空のためか肌寒い。 
11/24
8.0
Jog
   早朝ラン(ビーチ→トレイルラン)、観光。
11/25
10.0
Jog
   早朝ラン(ロード→トレイルラン)、のんびり。カヤック2時間。
11/26
5.0
Hike
   朝食の後、北上、途中で小ハイク。
11/27
       実験お手伝い。PCが休み中にクラッシュしてしまったので、復旧作業に明け暮れる。
11/28
       RVAD autopsy、Inflow problem。
11/29
       BVAD implantation、今日は全てDにしてもらう、研修医の先生の前立ちをしていた頃を思い出す。まだ長時間ドライブの疲れがとれない。

 就職活動の方だが、なかなか苦戦中だ。そうそう甘くはないことを痛感する。いろいろと種をまいておく必要がありそうだ。明日Dr. Mと面会予定。
11/30
      2005年医療施設調査by厚生労働省 産科・婦人科=5,997施設、そのうち産科を取り扱うのは1,616病院、1,317診療所。仮に年間110万人が出生するとすると、大雑把な計算だが、1病院+1診療所から出生してくる赤ちゃんは680人となる。これは多いでしょうか、少ないでしょうか?

 これまた別の計算になりますが、仮に病院には3人の医師、診療所には1人の医師がいるとすると、(1,616 X 3) + (1,317 X 1) = 6,165人。この数は実際の産科医師数よりも多いと思われる。つまり、多くの病院では未だ1人または2人体制であることを示しているであろう。

 こういった具体的な数字を厚生労働省が出してきておりますが、さて厚生労働省はこれを問題視して早急な対策を立てているのでしょうか?? ここまで産科医療の崩壊が進んできますと、厚生労働省は『確信犯』以外の何者でも無いと思います。誰ぞやのコメントではありませんが、これは明らかに『人災』です。

ttp://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/2006/12/post_d6f6.html
感傷的になってはいけないのでしょうが、私にはこの先生の叫びが痛いほど心に響きます。

 Meetingなど。STU 95/1,309問。かなりパターンがわかってきた気がする。点数が上がってきた。これからは速読を鍛えていかなければいけない。インターネットで検索してみたら、Outlookのバックアップの方法が書いてあった、、、時既に遅し、、、。
   
63.0
     63km, 1,309/2,009問。RP計画、GC計画、Step 3計画で、首が回らなくなってきた。いずれにしても残り数ヶ月で全て片をつけなければいけない。
 体は少し絞れてきたような気がする。だらだら走りが多いので、ポイント練習が必要に思う。


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