Buying a House in the US



 日本で『我が家』を購入するのは、一世一代の買い物との印象があるが、ここアメリカでは、家族の生活スタイル・構成員によって、『移り住む』のが当然のものとなっている。具体的に言えば、結婚当初はアパート暮らし、子供が出来てくれば部屋数の多い一軒家へ、子供が学校に通い始めれば学区の優れた地域へ、子供が高学年となり手を離れてくれば郊外ののんびりとした所へ、老後体の自由がきかなくなってくれば、こじんまりとしたタウンハウスやアパートへ、といった感じだ。
 
 もちろん我々留学生も、例外では無い。時には250坪以上の一軒家が一千万円ちょっと購入できるだけに、レンタルハウスに対してもとのとれない家賃を払い続けるよりは、いっそ購入してしまった方が、時には安かったりもするのだ(一般的には3年と言われている)。ここには、アメリカでの家の購入までのノウハウを提示したいと思う。

(1) 場所 
まずは、居住したいおおよその地域を決めることが先決であろう。勤務先・学校のシステム・環境、それぞれの家庭に準じた基準があろうが、先に地域を決める事はその後の検索を容易なものとしてくれるだろう。
Great Schools NET・・・全米の学校の成績や人種分布を、調べることが出来る。

(2) 相場 購入を決意したならば、理想の家をみつけるために、まずその地域の家の価格の相場をつかまなければいけない。最近では、家の売買価格や時期、税金などのかなりの情報が、インターネットで得ることが出来る。
Trulia・・・家探しの基本ともなるサイトである。現在市場に出回っている家や、過去に売買された家の情報も得ることが出来る。それぞれの家やStreetの様子を、画像で得られるため、雰囲気をつかむのにもいいだろう。また、それぞれの地域での平均売買価格などの基本情報なども、多く掲載されている。
Zillow.com・・・ 売買されていない家も含めて、家の基本情報が掲載されている。このサイトでは、上空から眺めた家の鳥瞰写真もあるので、庭を含めた雰囲気をつかむのにいいだろう。過去の売買履歴も調べることが出来る。

(3) オープンハウス 大体の価格が頭に入ってきたならば、現在市場に出回っているオープンハウスを訪れるといいだろう。価格と家の評価が一致するようになるための、トレーニングだともいえるであろう。購入までに、20軒以上のオープンハウスを訪れるといいだろう。

(4) Realtor オープンハウスを訪れていると、多くのRealtorと接することであろう。中にはいい加減なRealtorも多いのだが、その中で本当に自分が信頼できるRealtorを探すことが次のステップだ。誰かに紹介してもらうのが、我々日本人には確実かもしれない。

(5) チェックポイント オープンハウス巡りをするとともに、信頼出来るRealtorを決めたならば、いよいよ絞込みの作業に入らなければいけない。そこで今まで培ってきた家を見る『目』が、必要になってくる。

A. Location 家の価格を決めるのは、1にLocation、2にLocation、3にLocationである。家の内装や外装には手を加えることが出来るのだが、場所だけは動かすことが出来ないのである。学区の良し悪し、そして大通りからの距離がポイントとなる。オープンハウスの行われる日曜日は、比較的交通量の少ないことを忘れてはいけない。実際にStreetに立ってみて、騒音や交通量を確認することが大切である。大通りに接する家は、売る時も難渋することが多いようだ。

B. Basement 多くのアメリカの家には、地下がついていることが多いのだが、購入後のトラブルで大きな出費になる可能性があるのが、地下の水漏れである。一旦水漏れがあれば、一万ドル以上の出費を強いられるのはざらである。そういう意味で、大雨の後にアポイントをとるのは大切である。しっかりと地下の全周をチェックして、リークの有無を確認することだ。また現在リークが無くとも、地下の家具などを見れば、過去の浸水の有無は確認できるであろう。

C. 間取り いよいよ家の内部の観察だが、いくつ寝室(BR)があるのか、いくつトイレ(Bath)があるのかは、価格を決定する大きな要素である。手狭なBR2つをぶち抜いて1つにしてしまったり、2つあるBathの一つをとってしまったような物件は、そのBRの質はさておき、価格は下がってしまうのである(時にはマイナス30K)。また、Den(書斎)・Family Room(家族用居間)がある家は、その価値が上がってくる(5K-10K)。地下もUnfinishedなのか、Finishedなのかでも、弱い要素ながら価格に関与してくる(5K)。3Fは屋根裏部屋と評価されており、実際の家の登記上の床面積には含まれてはいないのだが、室の高い3F BRはその価格に反映されることもある(5K)。アメリカ人には、裏庭のDeckも評価基準となる(5K)。

D. Kitchen 家の値段は、『いかに売りやすいか』、『いかに買いやすいか』である。アメリカの家の購入に関して、女性の発言権は高く、しっかりとしたシステムキッチンが入っている家は、値段も高くなるのである(10-20K)。ここでBuyerの妻側の心をつかむことが大切となるのである。

E. Living Room, Dinning room 板張りであるのが、最近の主流である。価格には入らないのだが、趣味のいい家具をおいておくと、購買意欲をそそられるようだ。

F. Bed Room 一番大切なのは、その数である。次に板張りであるかどうか、クロゼットがあるかどうかもチェックしなければいけない。

G. Bath Room これもKitchen同様に、女性にポイントが高い所である。Updateされていれば、価格も上昇する(5-10K)。浴槽だけではなく、壁の防水もしっかりとチェックする必要がある。Bathが3階にある場合には、尚更である。

H.  アメリカの家は古い家が多いのだが、現代的な大きな窓を入れていれば、それなりに価格は上昇してくる。売る前に、全ての窓を入れ替えることもよくなされる。また、窓がしっかりと開くか、しっかりと閉まるかもチェックする必要がある。

I. 配電盤 旧式の配電盤は、購入後に交換をする必要がある場合がある。古い配電盤が残されていないか、しっかりとチェックしておこう。

J. 屋根 温度差の激しいアメリカ北東部では、屋根は5年から20年で交換するものである。外観から屋根の年代を推測するとともに、雨漏りの有無を最上階に行って確認しなければいけない。ちなみに屋根を換える場合には、5K-8Kくらいが必要となってくる。

K. 外装 ペンキが不要なものもあるが、依然木造のものもある。後者の場合には、5-10年毎に塗装が必要となてくる。

L. 裏庭 我々日本人には、大きな庭は魅力的であるが、アメリカ人にはかなりインパクトの低い評価対象となるようである。

M. Garage 評価対象としては低いが、雨漏りの有無などのチェックは怠ってはいけない。


(6) 絞込み 上記チェックを繰り返してくれば、値段と家の質がかなり相関してくるであろう。そうしながら、理想の家が市場に出てくるのを地道に待とう。Truliaではその地域での取引数も示しているが、生徒の転校などの多い5-7月がピークシーズンである。慌てることはない、しかし質の高い家は、1-2週間で消えていくのも事実である。

(7) Offer さあ、いよいよ『理想の家』を見つけ出したことであろうか。ならば、いよいよ値段の交渉に入っていく。これは我々BuyerとSeller当事者間の交渉ではなく、自分の依頼した(ちなみに手数料などはそれまでに支払わない)Realtorと、Sellerの依頼したRealtorとの交渉になる。具体的には、Buyerの提示した値段に対して、これくらいなら買いますよとの意思表示である。この際に、支払い能力・ローンの可能性なども含めて、多くの書類にサインをする必要がある。あまりBuyerの気持ちを逆なでする価格を提示した場合には、一回目で交渉決裂ということもありうる。
 交渉は電話での行って返っての交渉で、『いやその中間のいくらだ』、『いや、あの家はここが悪いからもうちょっと下げてくれ』、、、といった感じとなる。そのため交渉時点でその家に対する欠点(補修すべき点)をしっかりと羅列する必要がある。また入居時期を早めたりすることでの値段交渉術も行われる。
 値段はあって無い様なものである、市場の値段を作るのが我々である。納得するまで交渉するといいだろう。そして、一般的には数回の交渉で、最終的な値段を決定することとなる。

(8) Inspection 売買契約が成立して一息だが、まだ大事な仕事がある。自分の目だけでは無く、依頼したInspectorに、その家の問題点を鑑定してもらうという作業だ。Realtorが紹介してくれるはずだが、約$250程度の出費となる。その後の交渉にも大きく左右されるので、しっかりと家の細かな問題点を羅列してもらおう。例としては、Drivewayのひびわれ、洗面所の電源のアース、窓の支え、窓の質、スイッチのチェック、暖房のチェック、地下ガスのチェックなどなど。あちらはプロである。しっかりとわからないことも質問しよう。
 Inspectionが済めば、その問題点に対してどちらが出費を行うかなどの交渉を行っていく。数回のサイン業務あるであろう。

(9) Mortgage 日本で言うところのローンである。そのAPR(annual percentage rate)であるが、我々日本人には、良くても6-7%の利率をかけられることが多い。あらかじめ車をローンで支払い、Credit Historyを良好にしておくなどの計画性があるといいだろう。アメリカの場合、このAPRも結構馬鹿にならないので、出来うるだけ頭金を増やした方が無難であろう。一般的なアメリカ人の場合には、支払いの
20%もつぎ込んだらOKのようである。
 いくら頭金を出すのか、その後の支払いはどうするのか、細かな交渉を行うとともに、銀行の持ち金の証明として、Statementなどもコピーして提出することとなる。ちなみに、家の保険・税金の振込みなどのサービスもまとめてやってくれることとなる(自分ですることも可能)。

(10) Insurance 自然災害などに対してのInsuranceに入ることは、一般的となっている。車の保険とセットで入るとお得なので、いろいろな見積もりを出してもらおう。だいたい年間$500-600くらいか。

(11) インフラ 入居日なども交渉の過程で決まってくるであろう。ならば引越しに備えて、いろいろなインフラの予約をしていかなければいけない。電気、水道、ガス、電話、携帯、インターネット、長距離コール、ケーブルテレビ、VISA、勤務先、日本大使館、ECFMG、引越しトラックの予約、、、、リストを作って、しっかりと一つずつクリアしていこう。

(12) Escrow 日本でいうところの名義登録である。$1Kちょっとの手数料が取られるが、基本的にはここにお金を振り込んで、Titleを発行してもらうというものである。振込みには、銀行口座間でのWiringを使用することが出来る。Instructionも用意してくれることであろう。

(13) Moving 支払いも済ませて、いよいよ担当のRealtorから鍵を渡されれば、晴れて『我が家』である。今度は家の価値を下げないために、メンテナンスという重責が課せられるのであるが、まずはゆっくりと椅子にでも腰かけて、『我が家』を満喫したいところだ。



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